第27話 夢魔が飛び、魔猫が舞う(4)
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軽い掛け声とともに、標的の女性――リリーは何事もないかのように全てを回避する。時には大きく旋回し、宙返りをうち、時には体をずらす事でぎりぎりではあったがそれでもよけきってみせた。
「そ〜れっ、【ジオ】!」
「くっ」
そしてリリーが避けきると同時に出された電撃を、少女は身をよじる事で素早く避ける。
『Sonic move』
体をよじった回転をそのままに、高速移動魔法によって距離を一気につめる。回転によって生まれ、高速移動魔法でさらに増した速度を杖の刃にのせてリリーに迫るが、すでにそれは読まれていた。
「残念でした…っと!」
リリーは紙一重で蝶のようにひらりと体をひねり、斬撃を交わすと同時に、背中にあるかぎ爪のついた羽を少女へと叩きつける。
ギリギリ杖の軌道を変えてかぎ爪を迎え撃つ彼女だが、その反動で吹き飛ばされるようにリリーと離れてしまう。
「……どうして」
離れてもすぐに杖を構えなおしながらも、少女が若干息を乱しながらもそう呟く。
「その“どうして”は、どうして実力が上のはずの自分がこうも手玉に取られてるか、ッていう事でいいかしら?」
肩をすくめながら、目の前の少女の言葉足らずな疑問に口を挟むリリー。そのまだまだ余裕たっぷりだとでも言わんばかりの様子に、少女は杖を握る手に力を込めなおした。
確かに、彼女の聞きたかった事はそれである。
彼女はこの年にしては有り得ないほどに魔法の才能に恵まれ、かつ、戦うための訓練を十分に受けている。彼女達は知るはずもないが、純吾が聞いた評価されたようにその研鑽を重ねて裏打ちされた実力は、下級とはいえ悪魔であるリリーを上回るほどのもののはずである。
では、どうして彼女の攻撃は予測され、避けられ、そして反撃さえも許してしまうのだろうか? それは、このリリーの言葉に収束されていた。
「まぁ、本当は言う義理もないんだろうけどね〜。経験よ、け・い・け・ん。攻撃の読みあいも、結局は相手にそれをぶちあてるためのだまくらかしあい。相手をだますって事に対して、悪魔が負けるわけないじゃない」
なんでもない事のようにそう言いきるリリー。それから少しばかりの笑みを顔に浮かべ、言葉を付け加える。
「だからほらほら。本気で私の事倒したいって言うんでしょ? ならもっと速い攻撃でももっていらっしゃいな」
飄々と、絶対の自信があるかのように少女を挑発するリリー。そんなリリーの様子に、彼女への認識を大幅に変えた。手加減できる相手ではなく、今後ジュエルシード争奪において強大な壁になるだろう存在として。
だからこそ、絶対に今ここでジュエルシードの争奪戦からリリーを離脱させようと、少女は杖を構える。
(…
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