第27話 夢魔が飛び、魔猫が舞う(4)
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「ガアアアァッ!」
少女の使い魔である狼が本来持つ野性に支配されたかのような雄たけびと共に、目の前の純吾に渾身の一撃を振り下ろした。
しかしそれを【ハーモナイザー】の恩恵によって高められた力で迎え撃つ純吾。迫りくる攻撃に対して、短い呼気と共にくりだしたアッパーで攻撃どころか狼の巨躯すらはじく。
パァンという乾いた音と同時に、体が空中へ浮く。
「シャムス!」
「おっまかせにゃ! 【ガル】!」
すかさず純吾の後ろにいたバステトのシャムスが魔法で突風を巻き起こし狼へぶちあてた。空中で思うように体勢を整えられなかった狼は、突風に流されるまま大きく後退されられる。
「…行く」
「あらほらさっさー、にゃん♪」
狼と距離をとった純吾たちはくるりと後ろを向き、更にその距離を開けようと走り始めた。
(くそっ、何度やっても坊やの力に届かないじゃないか)
目の前で自分に背を向け走り始める純吾達を見ながら狼――アルフは舌うちする。
戦いと呼んでいいのだろうか、アルフが攻撃を繰り出し、純吾達に防ぎ弾かれそして今のように逃亡される、そんな事を何度も繰り返してきた。
その事に、ギリと奥歯を噛みしめる。
確かに、彼らは自分の主に負けた。戦闘に対する技術もなく、ただがむしゃらに向かってきただけだと聞いていた。
だからと言って今回もまた簡単に勝てるだろうと踏んだのがいけなかった。相手は冷静に魔法とは違った力で強化された体を十全にコントロールしているし、さらにあの猫の様な魔導生命体が追加されたのだ。攻撃をする隙が全くなくなり、結果今のように惨めに小さい敗退を繰り返している。
そう、今の自分は惨めだとアルフは前足を踏みならす。
彼らをなめて自分だけでも十分相手できると考えた挙句、こうもあっけなくあしらわれ、段々と他の仲間との合流をされつつある。
それでも全力で戦い、敗れて合流を許してしまったというのならまだ自分の中でも言い訳をつける事ができたかもしれない。
けれども彼らは自分を顧みずもせず、まるで羽虫でも払う様に吹き飛ばし、一回だってまともに拳を合わせた事はない。
「坊や、坊やの傷つけない信念って言うのは立派さね……」
本当は理不尽なのだろうが、アルフは抑えられない怒りと共に、再び純吾達を追いかけるために駆けだした。
「けど、その信念はあたしたちの“覚悟”を踏みにじるものなんだよ――」
『Photon Lancer』
「…これでっ、ファイア!」
少女――フェイトの周りに発生した黄色の光球が彼女の声と共に矢のように射出された。数は十を超え、その速度は人の反応速度を超えている。
けれども、
「よっ、ほっと」
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