第二十話 蚊帳その十
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「私もそうだしね。まあそれぞれで出て来るお酒は違うけれど」
「神道は日本酒よね」
里香はすぐにそれを出した。
「それよね」
「ええ、うちはね」
やはり神社はそれになる。
「で、お寺はね」
「般若湯よね」
「名前はそれだけれど」
表の名前だ、僧侶は建前では酒を飲んではいけないということになっていたのでそれでこうした名前を使っていたのだ。
「まあお酒は出るから」
「日本酒だったり焼酎だったりするわよね」
「お寺は案外決まってないの」
寺はそうでキリスト教の教会はというと。
「キリスト教はやっぱりワインね」
「そうよ。だからワインもね」
「飲むのね」
「お互いに」
「で、天理教はどうなの?」
琴乃はその宗教団体の酒についても尋ねた。
「日本の宗教団体だから日本酒?」
「正式というか本来はそうみたいだけれど」
「実際は違うの」
「ビールが圧倒的に多いわ」
「そっちになるの」
「そうなの、ここの天理教の教会って八条分教会っていうけれど」
そこの教会の話だった。
「ビールばかりあるわよ」
「それどうしてなの?」
「何か八条文教会の親教会、奥華大教会は伝統的にお酒飲みで」
景子は琴乃に話していく。
「日本酒もかなり飲むらしいけれど」
「ビールの方が多い?」
「沢山飲むの」
「そうらしいのよ。それでなのよ」
「天理教はビールなのね」
「うちの町じゃね」
こう琴乃に話す景子だった。
「そうなってるのよ」
「で、お寺は般若湯で色々で」
「何故かそっちは焼酎が多いのよ」
「鹿児島みたいね」
「何でも住職さんのご先祖さん実際に鹿児島生まれだったそうよ」
この事情も話される。
「明治維新でこっちに出て来たらしいのよ」
「それで焼酎なの」
「今の住職さんは完全に関西人だけれどね」
あの薩摩言葉を喋ったりはしないというのだ。かつての薩摩弁はそうそう容易にわかるものではない代物だ。
「飲むお酒、いえ般若湯はね」
「焼酎なのね」
「そうなってるわ」
「バラエティ豊かだな、おい」
美優もここまで聞いて言う。
「本当にな」
「そう思うわよね、やっぱり」
「ああ、まあどの宗教も仲がいいのはいいよな」
「そうよね。喧嘩するよりは」
「教科書読んだら欧州とか凄いからさ」
美優が言うのはこの地域のことだった。
「同じキリスト教でもさ」
「対立凄いわよね、確かに」
「あそこは」
「壮絶な殺し合いしてるしさ」
こうした話に枚挙に暇がないのが欧州だ。
「三十年戦争なりで」
「サンバルテルミーの虐殺とか?」
景子はフランスで起こった惨事を出した。
「あれとかよね」
「ああいうのがあるからさ、カトリックだのプロテスタントで」
「うちの神社が仲良くして
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