第六幕その一
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子も殺そうとしていた」
「だがそれは適わなかった」
「それで今天の裁きを受けている」
「左様。これは神の怒りである」
ミサイールも高らかに言った。
「悪は裁かれる。ボリスとその手下達もまた」
「既に裁いております」
「その一部を」
見れば民衆達の足下には貴族とその一家が転がっていた。寄ってたかって嬲られ、惨たらしく殺されていた。服はまるでボロ布の様になっており死体も元の形を留めてはいなかった。あまりにも無残な姿であった。
「そうだ、それでいいのだ」
そしてワルアラーム達はそれをよしとした。
「ボリスは神の敵でもある」
「異端者なのですね」
「そう、異端だ」
煽る様に言う。
「ボリスとその手下達は異端である!」
「異端を許してよいのか!」
「いえ!」
民衆達はそれを拒否した。
「異端を許すな!」
「一人残らずこの手で殺してやる!」
そこに転がる貴族達の様に。彼等は全くわかっていなかった。
「そして何を望むんだ?」
ワルアラーム達は彼等に問うた。
「何を望むのだ?答えてみるんだ」
「皇帝を」
彼等は答えた。
「正しき皇帝を」
「そう、皇帝をだ」
ミサイールはそれに頷いてみせた。
「皇帝陛下を。では我等の陛下は誰だ」
「ディミートリィ様だ!」
彼等は一斉に答えた。
「あの方しかおられぬ!」
「わし等の皇帝は他にはおられぬ!」
「そう、あの方しかおられぬ」
「ロシアを守るのは」
「そして正しき教えを」
民衆達はグレゴーリィが偽者であることも、彼の後ろにポーランドがいることも、そしてそのポーランドもまたバチカンに操られていることも全く知らなかった。彼がロシア正教の守護者になると信じて疑わなかった。
「では迎えよう」
ワルアラームとミサイールはそんな彼等を煽動する。
「ボリスとその手下共を倒し」
「ロシアを救うのだ」
「そう、今ロシアの運命がかかっている」
ワルアラーム達とは別にロシア正教の僧侶達が民衆の前に姿を現わした。見ればワルアラームやミサイールよりも遥かに位の高い僧侶達であった。彼等はボリスに見切りをつけグレゴーリィについたのだ。彼等はグレゴーリィが何者で後ろに何がいるのかを知っていた。だが金と地位の為に彼についたのである。
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