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失われし記憶、追憶の日々【精霊使いの剣舞編】
第四話「乙女の学び舎」
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入ろうか。俺に用があるのだろう?」


「ふむ、それもそうだな」


 婆さんが机の引き出しから引っ張り出したのはクリップで束ねられた書類。そこには俺の写真とプロフィールが書かれていた。


「今日から君にはこの学院に編入してもらう。各種手続きは既に済ませてある」


「うん? 編入って、それはまたどうして」


 俺のプロフィールが書かれた書類をペラペラ捲りながら、婆さんに聞く。よくもまあここまで調べたものだ。


「お前が必要だ。以上」


「簡潔過ぎだ」


 はあ、とため息を吐き、書類をテーブルに置く。


「それで、俺に何をしてほしいんだ?」


「ほう。分かるか?」


「当たり前だ、何年の付き合いだと思っている」


 それはすまなかったな、と苦笑した婆さんは表情を真剣なものに戻す。


「二か月後に元素精霊界で《精霊剣舞際》が開催される。少々気になることがあるのでな、それに出場しろ」


《精霊剣舞際》。三年前、フローレン・アズベルトで出場し、目当ての人物がいなかったため決勝戦で早々に敗退した。その大会に婆さんは再び出場しろと言う。


「ふむ……まあ、婆さんには恩があるからな。わかった、その話、引き受けよう」


 婆さんには前回の《精霊剣舞際》に出場させてもらったという恩がある。婆さんの後押しが無ければ出場することは叶わなかっただろう。俺はその恩を返さなければならない。


「それで、出場するのはリシャルトでいいんだな?」


 それはフローレン・アズベルトとして出場しなくても良いのかという意味。リシャルトの名で名指しされたのだから返答は目に見えているが、一応の確認はしておこう。


「ああ、リシャルトに出場してもらいたい」


「わかった。それと俺が男の精霊使いだと知っているのは?」


「私と君の担任となるフレイヤ先生だけだ。別にバラしても構わんぞ? いずれ知れ渡ることだしな」


「それもそうだな」


「学院と宿舎の案内はエリスに任せている。これがお前の制服だ。本物のお姫様が集まる乙女の学び舎に男が一人。精々、愉しめ」


 四つ折りに畳んである制服を手渡した婆さんはニヤッと笑った。


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