第四話「乙女の学び舎」
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足は美脚とも言える美しさがある。
俺も男だ。当然そこらの男と同様、女には興味ある。が、マナーも弁えているつもりだ。どこぞのエロ小僧のように鼻の下を伸ばしてジロジロ見る趣味はない。
早々に視線を反らした俺は婆さんに用件を聞く。
「で、なんの用だ? 俺を呼び出したりして」
「うむ、それなんだがな。――エリス、君はもう下がれ」
「なっ、こんな得体の知れない男と同じ部屋で二人きりになど……この男が、その、ふ、不埒な欲望を抱くことも――」
まあ、それが普通の反応か。襲うだなんてありえないが。
しかし、婆さんは犬を追い出すかのように、シッシッと手を払った。
「問題ない。こいつにそんな意思はないさ。さっさと出ていけ」
「ですが――」
「エリス・ファーレンガルト」
婆さんから強いプレッシャーが放たれる。その静かな声にエリスの肩がビクッと震えた。
「お前はいつから、私に意見できるようになった?」
「も、申し訳ありませんっ」
余程、婆さんが恐ろしいのか青い顔で頭を下げたエリスは早足で部屋を出た。
婆さんがやれやれと首を振る。
「彼女はエリス・ファーレンガルト。ファーレンガルト公爵家の娘だ。騎士としては優秀だが、どうにも融通が利かんのが玉に傷でな」
「あの子もここの学院生なのか? 甲冑なんて着ていたが」
「ああ、風王騎士団の団長だよ。学会陰の秩序を乱す輩を取り締まるのが彼女らの仕事だ」
風紀委員会のようなものか。
「ところで、ずいぶんと面白いものを身に付けているじゃないか」
婆さんの視線は俺の左手に向けられている。手の甲のソレをそっととなぞった。
「成り行きでね。不思議な出会いを得たものさ」
「フッ、なるほど。しかし《精霊の森》の最奥部にある封印精霊を手懐けるとはな。あれに告白してフラれた者は後を絶たないというのに」
「確かに、少々じゃじゃ馬だったな」
「あれをじゃじゃ馬で済ませるか、君は相変わらずだな。取りあえず、おめでとうと言っておこうか。これで君も晴れて精霊使いの仲間入りだな。気分はどうだ? 『謎の精霊使い』」
「その名で呼ぶのは止めてくれ。むず痒くなる」
ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべる婆さん。俺は肩を竦めることで応えた。
婆さんには俺が精霊契約が行えることを教えてある。普通は戯言として捉えられるが、なぜか婆さんは俺の話を無条件で受け入れた。一度だけ、なぜこんな荒唐無稽の話を信じたのか聞いてみたが、見事に煙にまかれた。侮れない婆さんである。
「さて、いい加減本題に
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