第四話「乙女の学び舎」
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遅かったじゃないか。リシャルト・ファルファー」
婆さんはいつものように不機嫌そうな声を出す。
「三年ぶりだな、クー。何やら知らぬ名を名乗っているようだが」
「まあ、色々と事情があってな。今はリシャルトだ。さっき俺の名を口にしていたんだから婆さんも知っているだろう?」
黄昏の魔女はフッと微笑む。
「リシャルト・ファルファー!? では、こやつが例の――」
「で、いきなり蹴りを見舞ってきたこちらの嬢さんは誰かな?」
「ぶ、無礼者め! なんたるものの言い方だ!」
「無礼? 初対面で問答無用で攻撃をしてきた君の方が無礼なのではないかな? それにここは学院長室、しかも学院長の前だ。礼を失するのはどちらかな」
「くっ……」
腰の剣に手をかけ、悔しそうに歯噛みをする少女を見て大人気なかったかなと、今更ながら思う。
少しフォローする気持ちで微笑んだ。
「だがまあ、良い蹴りだったぞ。体重と下半身のバネがしっかりと活かされていた」
「な……よ、余計なお世話だっ! ふ、不審者に誉めらても嬉しくないわっ! ペペロンチーノにするぞ!」
剣を抜く少女。その姿に俺は内心、感嘆の息を洩らした。
切っ先は真っ直ぐ俺を向き、少しのブレもない。剣を構えるその姿勢は多少の気負いはあるもののある種の美しさがあり、相当の研鑽を積んでいることが窺えた。
「剣を納めろエリス。リシャルトの言う通り、この場での私闘は禁じられているはずだ」
「が、学院長……ですが――」
「私に二度も同じことをいわせるつもりか? エリス・ファーレンガルト」
「……いえ、も、申し訳ありません」
エルスじゃなくてエリスだったか。それにファーレンガルト? どこか聞き覚えがあるような……。
首を捻っていると、少女――エリスは俺をキッと睨み付けてから、しぶしぶ剣を納めた。
「ふむ、しかしお前が男に興味を持つとは。そういう年頃になったのだな」
「が、学院長!? 何を急に!」
「ん? そのもて余した肢体の火照りをその男に鎮めてほしいのだろう? 先程も急に飛び掛かったではないか」
「なっ――」
羞恥で真っ赤になるエリスを尻目にジトッとした目で婆さんを見る。
「おいおい、あまりからかうなよ。俺は兎も角、こっちの嬢さんはそういう話しに耐性がないようだ」
「だが良い体をしているだろう?」
俺はそれには答えず、チラッとエリスの体に視線を向ける。
まあ、確かに均等の取れた体はしているな。
凹凸のある体はメリハリがあり、色白の長い
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