第26話 夢魔が飛び、魔猫が舞う(3)
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凝らしつつそれを考えていると
「【ガル】っ!」
突風が土煙りを巻き込みながら向かってくる。
大きく後ろに跳ぶ事でそれを避けた狼が再び前を向くと、煙の晴れた場所に無傷の少年と女性のような猫の様な姿をした、彼の使い魔が立っていた。
「まったくもぅ。ジュンゴにゃん、シャムスの事ほっといて一人で突っ込んでいくなんて酷いにゃん」
「ん…、ごめんね?」
「これからは気をつけてにゃん♪ それより――」
にへらと相好を崩したシャムスは、彼女より背の低い純吾に抱き、ニット帽越しにその頭に頬擦りする。
「やっぱりジュンゴにゃんはいい男だにゃ〜。みんなの為なら戦えるって言った時の凛々しさったらもう、辛抱たまらんにゃー」
「…くすぐったいよ、シャムス」
「おいおいおいっ、戦いの最中だっていうのに随分と余裕じゃないかぃ!」
目の前でいちゃつき始めたシャムスを睨みつけ、狼が吠える。
正直、予定外の事が起こりすぎていて、狼は内心焦っていた。
尋常ではない身体能力を持ち、さらに多彩な攻撃手段を持つ目の前の少年。事前に聞いていた彼の存在が予想以上に厄介だった事だけでも頭が痛いのに、さらに悪魔を名乗る使い魔までいるときた。
ここで目の前の彼らを自由にしたらあの子が危ない。厄介だからこそ自分が何とかしなければならない、そう焦る自分に言い聞かせ、どう立ち回るかを全力でシミュレートする。
「…狼、さん?」
シャムスから離れた純吾が声をかける。その声音に少しだけ自分の主に話しかけられたような不思議な感覚を覚えつつも狼は答えた。
「何だい、いきなり改まって」
「さっきは戦うって言った。けど、本当にそれしかない? なにか、ジュンゴ達が戦わなくて済むような方法が――」
けれどもその言葉を聞いた途端、狼はさっきの感覚も、自分の中の冷静な思考を全て投げ捨てた。それほどの強い怒りが彼女の中でこみあげてきたのだ。
「ならあんたらがあたしらの前から消えてくれればいいんだっ! ジュエルシードをおいて二度と関わらなきゃ、あんたの言うとおり戦わなくて済むんだ! どうしてそれをしようとしないんだよ、あんたはっ!!」
その言葉に純吾は虚を突かれたような表情を作り、その後顔を俯かせて消え入りそうな声で答える。
「けど、ジュンゴ達も、ユーノと約束したから……」
「はんっ、やっぱりできないんじゃないか。それなのにそんな甘っちょろい事言うなんざ、坊や、あたしらをなめてんのかぃ」
「ちがっ…、ジュンゴ、みんなが傷つくのがいやな――「ジュンゴにゃん」」
吐き捨てるような狼の言葉に対しての必死の弁明に、突然遮るように声が割り込む。
声の主はシャムス。純吾の隣に立っている彼女も
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