第26話 夢魔が飛び、魔猫が舞う(3)
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であろう方向に背を向け、狼と対峙する純吾。その姿に先程までの迷いはなく、握りしめた拳を狼へ向ける。
「……此処であいつ、とめる」
「舐めた事言ってくれる……。あんた一人で、あたしがとめられるもんかっ!」
言葉が届くより速く、狼が純吾へ向かって跳躍して全体重をのせた前足を振り下ろした。それは子供一人を容易く叩きつぶすだけの力が込められたもの。どうして心変わりしたかは知らないがこれで終わりだと、眼前の少年を眼下に捉えながら狼はほくそ笑む。
だがしかし、ズシンと重たい音と共にその強打は阻まれてしまった。
「なぁっ」
狼は直前までの余裕の崩し、少年の腕に侵攻を阻まれる前足を驚きで見開いた目で見つめる。どれだけ力を込めても少しも動かす事ができない。
(何て馬鹿力だい………この坊や)
「…何かあるのは、さっきの話で分かった」
驚愕に染まる狼を見上げつつ、純吾は言う。悲しそうに苦しそうに、後悔を押し殺して眉をしかめながら。
「けどっ! ジュンゴにも大切なものがある! それを守るためならっ、ジュンゴは戦うっ!」
けれども、その行動に迷いはなく。狼の足を掴みなおし、思い切り振り上げ、そして投げ飛ばした。
「行ってユーノ! ジュンゴよりユーノは防御が得意、だからなのは達支えてあげてっ!」
木を飛びおりつつも純吾が声を張り上げる。その声に一つ頷いたユーノは、一刻も早くなのは達のもとへ戻ろうと走り出した。
「分かった! 純吾達もすぐに来てよっ!」
それだけ言い残すと、振り返らず一心腐乱に前へと駆けはじめる。
純吾はその声を背中で受けつつ、かなりの距離をおいて地面に着地した狼に向かっていく。
「なめるなぁっ!」
ダンと狼の足が地面を打った。それを合図に何個もの光球が浮かびあがり、猟犬の様に一直線に純吾へと襲いかかる。
純吾は走るのをやめずに自分へと迫る光球を目でとらえつつも、左手で携帯を操作。あらかじめ登録をされていた悪魔のスキルの中から一つを選びだし、右手に眩く歪な光の剣を作りだす。
「【なぎはらい】っ!」
声と共に剣を光球へ向かって振り下ろす。地面に振り下ろされた剣の威力と、破裂した光球の影響で土煙りが濛々と舞いあがり、狼の目から少年がどうなったかを完全にかき消してしまった。
(……まさか、あんなものまで出せるなんて。けれども、あの剣みたいなもので大分やられただろうけど、シューター全部を叩きつぶせるはずはない。
さて、坊やはどうなっているだろうかねぇ)
獣の目でもっても見通せない煙を前にしながら狼は考える。あまり得意ではない射撃魔法でどれだけ通用するかは分からないが、ダメージは確実に負わせたはず。ではこれからどうするか、目を
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