第26話 夢魔が飛び、魔猫が舞う(3)
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ともしまらない言葉とは反対に、旋風を巻き起こすほどの速さでもって、リリーは少女の元へと宙を疾駆した。
「ジュンゴにゃん!」
唐突に自分たちへと迫る巨大な爪を前にして、咄嗟にシャムスは純吾を抱えこみ、横っ跳びに地面を転がるようにしてそれを避けた。
その途中、純吾がこれまた攻撃に反応できていなかったユーノを巻き込んで地面を転がったため、「うわぁっ」と情けない声が上がる。
その後も何度も地面を転がり、渾身の一撃の反動から抜け出せない狼から距離をとる。そして全身をバネにして、曲芸師よろしく起き上がりざまに近くの木の上までジャンプした。
「ジュンゴにゃんっ、今のうちにハーモナイザーを!」
木の上で純吾を下ろすと、シャムスは眼下の狼を見据えながら鋭く迫る。
「でも…」
しかし、純吾も同じように狼を見つめていながらも、戦う事を躊躇ってしまう。
今相対している狼の女性は、決して悪い人ではない。昼間のどこか間の抜けた様子や、自分が渡した料理の事を嬉々として語る姿。それに、あの少女のこと。少女の事を語る彼女の口調は、瞳は、そしてそこから見え隠れする思いはとても優しく温かいもので。
例え自分の身が危なくなっても、純吾は彼女達の事を傷つけたくないと思っていた。
「もらったぁ!」
その攻撃を躊躇っている純吾達を狼の女性が見逃すはずが無かった。頭上で何か問答をしている彼女の敵に向かって再び飛びかかっていく。
「あーもうこっちくんにゃ!」
「分かりましたと言うとでもっ!」
その攻撃を隣の木に飛び移る事で避けるシャムス。そのまま木の上で必死の追いかけっこが始まる。
純吾はシャムスの脇に抱えられ、その必死な顔を間近で見る。自分を守ろうと額に汗を浮かせ、必死になっているシャムスの横顔。その顔を見ながらもまだ決心はつかず、けれどもこの状況をどうにかしないと、そう焦る気持ちから緑の携帯を強く握りしめる。
その時、純吾達から見て5kmほど前方だろうか、そこに何本もの雷が落ちた。空を見上げても雲一つない快晴の夜空。自然には起こり得ない現象を前に、両者は足を止めそれを見やる。
「あれはリリーの…」
「おや、あっちでも始まったようだねぇ」
シャムスは呆然と呟き、狼は若干眩しそうに目を細めながてそううそぶく。
そして純吾は、その残光に自分の大切なものが何だったかを思い出した。
「…シャムス、下ろして」
純吾はゆっくりと木の上に降り立ち、握りしめた携帯を開いてキーを押した。全身が一瞬光に包まれたのを確認すると抱えていたユーノも木の上に下ろした。
「…先に行って、ユーノ」
「えっ、でも、純吾達はどうするのさ」
なのは達がいる
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