第25話 夢魔が飛び、魔猫が舞う(2)
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いた女性の雰囲気が突然変わる。いや、次の瞬間、女性の体にも劇的な変化を遂げ始めたのだ。
鋭かった目に凶暴な野性の光が灯り、女性としては高い体が大きく膨れる。それと同時に人間の手だったものは鋭い爪を生やして大地を踏みしめ、全身に髪の色と同じオレンジ色の体毛が生えていき……
「そうか…、あなたはあの子の使い魔だったのか」
目の前の光景を見ながら、純吾の足元でユーノがかすれた声で言う。
今彼らの前には女性の姿はなく、彼女が変身した一匹の狼がいた。
「そうさ、あたしはあの子の使い魔。製作者の魔力で生きる代わりに、命と力の限りを尽くしてあの子を守るんだ」
グルルという威嚇と共に女性の声が頭に響いてくる。
「だから坊や達。あんたらには何の恨みもないけど、あの子の幸せの為にこれ以上ジュエルシードには関わらせやしない、それがあんたらのお仲間を傷つけることになったってねえっ!」
そう言うや否や、女性だった狼が地面を蹴り、純吾に向かってその前足を振り落とそうとする。
「ジュンゴ!」
そうユーノが叫ぶが、何もする事ができない。そのまま鋭い爪はあと少しで純吾に突き刺さりそうになり――
「【ガル】っ!」
唐突に狼に向かって吹き荒れた風によって、その巨体ごと後ろへと押し戻された。それでも空中で器用に一回転して地面に降り立った狼は、風の出所であろう純吾達より後ろにある木の辺りを睨みつけた。
「はんっ、命と力の限りを尽くして守る? ご大層な理由でもあったら、シャムス達がはいどうぞとでも言うと思ったのかにゃん?」
凛とした鈴の音の様な声がしたかと思うと、トンっという軽い音と共に、一匹の猫が木の上から純吾の肩に降りてきた。
「ごめんにゃジュンゴにゃん。ぎりぎりで光の中に入り込んだから、ちょっと遠くに飛ばされちゃってたにゃ」
「…ううん、来てくれただけで嬉しい。ありがとう、シャムス」
その猫――シャムスの顎の下を軽くくすぐりながら純吾が言う。先程まで辛辣な光を湛えて狼を見据えていたシャムスだったが、気持ちよさげにそれを受け入れる。
「はっ、昼間に少し疑問に思ってたけど、やっぱりその猫普通じゃなかったのかい」
依然睨みを利かせたまま、少しだけ感心したような声色で狼が喋る。昼間感じた2つのプレッシャー。リリー以外に誰がそれを発したかが分かり、また狼からしたら異様と感じる力をシャムスが使った事に納得をしたそぶりをする。
「あぁ、なるほどねぇ。そいつがあんたの使い魔って訳かね」
「…使い魔じゃない。シャムス、ジュンゴの仲魔」
続けて狼が言ったその言葉に、シャムスが嫌悪を隠そうともしないで表情に浮かべ、純吾はちょっと憮然としたように、眉を少しだけ顰めた。仲魔、と
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