第25話 夢魔が飛び、魔猫が舞う(2)
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狂ったように嗤うその姿に、一層自分の愛機を握る手に力を込め、すぐにでも先制しようと体をかがめたとき、森から更に声があがる。その声の主を見て、愕然としたようにフェイトは目を見開く。
「あなたは……」
そんな彼女を尻目に、以前彼女が打倒した少女と少年が、必死の形相で相対している女性の元へと走り寄っていた。
「リリーっ!」
ようやく先行したリリーに追いついた純吾は彼女に向かって叫んだ。今彼女は森を抜けてすぐにある川辺にいて、その川にかかっている橋の上には、予想した通り、以前訳も分からず対峙した少女と、昼間にであったオレンジ髪の女性がいる。
自分たちが現れた時、少女が何か呟いていたようだったが、今はそんなこと気にしていられない。何故なら
「あははははっ………って、あら、ジュンゴ。もう来ちゃったの?」
名前を呼ばれた事に気が付いたのか、リリーは哄笑を止め、いつも通りの笑顔で、純吾達の方へと振り返る。
しかし、その笑顔は表面上の事だけだ。戦いに酔ったような興奮をし、目には常にはない冷たい青い光が、月を背負い影になっているその目の付近を煌々と照らす。
「ん〜、まぁ…、いえ、むしろこれがいいのかしら? ほらジュンゴ前を見て。あの女……、ジュンゴに泥付けてくれた女よ。
ねっ、いい機会だし、ここであいつら殺しちゃおうよ。あいつら見てるだけで本っ当にいらいらしてくるし、今日の昼間みたいに絡まれるのなんてもうまっぴらよ」
明日の朝食を決めるかのように、リリーは軽くそう言ってのけた。
それは純吾の一歩後ろで息を整えていたなのはの耳にも伝わる。そのあまりの平然とした様子に普段の彼女を知るなのはは、さっきから否定し続けていた事は、どうしようもない事実だったのだと思い知らされる。
(…リリーさんは、本当に)
――本当に悪魔だったんだ。
「…ダメ」
少女達が呆然とする中、彼女の主である純吾は、顔には僅か、けれども声にはとても悲しみを込めてリリーに答えた。
「どうして? あぁ、分かった。人が死ぬところなんて見たくないのね? ごめんね、そんなこと考えられない位頭に血が昇って「……に、そうしてほしく、ない」……えぇ?」
言葉を遮られたリリーが、不快そうに浮いたまま身をよじる。理解できない存在となった彼女の雰囲気に、純吾の近くにいたなのはは思わず身をすくませてしまう。
「リリーには、そうしてほしく、ない」
けれどももう一度、今度ははっきりと純吾は言う。子供が駄々をこねるのを見守る母親の様に一度小さくため息をついたリリーが、ふわりと純吾の近くまで舞い降り、猫なで声とでも言うべき甘い声色で囁く。
「ねぇジュンゴ。あなたのその優しい所、私すごい好き
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