プロローグ〜邂逅〜
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軍の兵士を何人も葬り去っているのだ。処遇と聞いて楽観的になれない程度の常識はすでに持ち合わせている。
「安心しろ。別に殺そうってわけじゃない。ただその前に聞きたいことがもう少しだけある」
「…何ですか?」
「あの背後からの奇襲…発案したのはお前か?」
「何!?このような子供がそんな芸当を出来るわけないっ!」
桃蓮の問いに祭がありえないと言った風に応える。
しかし桃蓮はじっと少年の顔を見つめている。
「…そうです」
「やはりそうか」
少年は沈黙を守っていたが、桃蓮のすさまじいほどの無言の圧力に遂には屈し、そして肯定の返事を返す。少年自身、この答えの持つ意味を分からないわけではない。
奇襲をかけることによって、少なくとも真正面からぶつかり合う以上の損害を孫堅軍に与えたのだ。そんな者の行く末など想像に難くない。
だからこそ少年は俯き、ギュッと目を閉じ、そして拳を強く握り締めて桃蓮の言葉を待った。
「この年でこれほどの才。…失うには惜しすぎる」
しかし桃蓮の口から出た言葉は少年に対する讃辞。
「どうだ?私に仕える気はないか?」
「…ふぇ?」
そして続いて出た言葉もまた少年には想定外の言葉。
あまりの急展開に少年は言葉を失う。
「そうだな。親もいない、そして名前もない、それでは余りにも不憫だからな。焔、コイツを引き取ってやれ」
「ええ、そのつもりよ」
そんな少年に関係なく、話はとんとんと順調に決まっていく。少年はただ呆然とその様子を眺めていることしかできなかった。
「というわけでよろしくな、童」
呆けていると、突然頭の上に手を乗せられる。
少年振り向いた先には同じく急展開に取り残された祭の姿があった。祭は少年の頭を焔とは逆に乱暴に撫でつける。
「我が名は黄蓋、字は公覆。…まぁこれからは同志じゃ。真名の祭と呼ぶことを許そう」
「私は孫堅文台。桃蓮と呼べ。そしてこっちが朱治、字は君理だ」
「自己紹介くらいさせなさいよ。真名は焔よ。これからはあなたの母親になるから存分に甘えなさい」
あっという間に自己紹介を済ませる三人に少年は返す言葉を探すが見当たらない。
何せ少年には名前などないのだから。
そんな少年の心中を察したのか、焔は自らの考えていたことを言葉にする。
「それでね、あなたの名前を考えたのだけれど…」
その言葉に少年は敏感な反応を示す。
「姓は朱、名は才、字は君業、そして真名は…そうね、偉大なる長江をなぞらえて『江』でどうかしら?」
「…」
何かを言おうと必死に口を動かす少年。
しかしどうしても出せない。代わりに嗚咽が漏れ
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