プロローグ〜邂逅〜
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は先ほどからずっと顔に笑みを張りつかせたままだ。その表情でこのようなことを話されているのがまた不気味でもあった。
「…どうして笑っているのか、ですか?」
「「「っ!?」」」
心の内を見事に言い当てられ、桃蓮たちは思わず驚きを表に出してしまう。しかし少年はそんな様子に構うことなく言葉を続ける。
「何故かはわからないんですけど、こうやって笑っていると頭たちに殴られないですむんです。だから…」
話す少年の目にはわずかながらも悲しみの感情が宿っている。
「そうか…」
今の桃蓮にはそうとしか言えなかった。
もしかしたらこの子は賊に殺された子供たちよりもよっぽどつらい目にあってきたのかも知れない。いや、ほぼ間違いなくそうだろう。
それを考えると「今の自分たちにはかけてやれる言葉がないのではないか…」という思考にたどりつく。
気まずい沈黙が周辺を支配する。
ガシッ
「ひっ!?」
沈黙を破ったのは少年が発したかすかな悲鳴。
「怯えないの。…私たちはあなたの味方よ」
何と焔が少年の頭をかき抱いたのだ。少年は突然のことに驚き、そして戦場で見せた姿とは正反対のおびえた様子で体を恐怖に震わせていた。
「大丈夫」
焔は今一度少年に言い聞かせる。
少しだけ少年の震えが弱まる。すると焔は少年の頭をゆっくりといとおしげに撫でる。
「…今まで辛かったでしょう。色々なことをされて、生き延びるために人も感情も殺して…。でももう我慢しなくていいの。それに怯えることもないわ」
少年を気遣い、そしていつくしむ声がその場に溶けて消えていく。
数拍の間を開けた後、黙ってされるがままになっていた少年がようやく口を開く。
「…ホント、ですか?」
それは先ほどまで淡々と質問に答えていた無感情な声ではなく、年相応の怯えに満ちた声。
「ええ」
そんな声を聞いて、焔は少年の心が壊れてしまう前に何とか救いだすことが出来たのだ、と根拠のない、しかし間違っていない感触を得る。
焔の腕の中では小さな嗚咽を漏らし、涙を流す少年の姿。
焔は泣きやむまで、少年の頭を優しく撫で続けた。
――――――――――――――――――――
「落ち着いたか?」
泣くだけ泣き、少年は少しだけすっきりした顔をのぞかせる。
そして桃蓮はその様子を見て話を元に戻す。
「お前の処遇についてだが…」
そう言った瞬間、再び少年の体が強張る。少年は既に孫堅
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