プロローグ〜邂逅〜
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と呼んだのは、この大陸に真名という風習があるからだ。それは本人に認めた人物にしか呼ぶことを許されない神聖な名前。
それを勝手に口にすることは万死に値するほど大事なものである。ちなみに朱治の真名は『焔』、孫堅の真名は『桃蓮』である。
さて、話を戻そう。
孫堅の勘だが、常人のソレとは一線を画している。いわゆる超直感というもので、その的中率は百発百中。
ゆえにこの軍の戦略において、孫堅の勘は到底無視できるものではないのだ。
その孫堅の勘が反応している。それはつまり実際にこのあと何かが起きるということ。
そのことを理解した黄蓋たちは否応なしに警戒度を引き上げる。すると敵を取り囲んでいた軍勢に動きがあったようだ。
そちらのほうに目を向ける3人。
そこには信じられない光景が浮かんでいた。
「人が宙に舞っている…!?」
そう、孫堅軍の兵士たちが次々と空に舞い上がるのだ。無論そのまま浮いているということはあるわけもなく、そのまま地に向けて自由落下を開始する。
到底生き残れるとは思えないほどの高さまで舞い上がった体は「グシャッ」と嫌な音を立てて地面にたたきつけられる。
「…来たようだな」
にわかに信じられない光景に思わず呆然としている祭、焔とは対照的に桃蓮だけはその一連の出来事の元をその眼に見据えていた。
気がつけば、顔を古びた布で覆った小柄な人物が桃蓮たちの目の前に現れていた。
「孫堅殿でよろしいでしょうか?」
本来あるべき感情がこもっていない声。そのことに桃蓮たちは少しばかり肝を冷やす。
声からは性別がまるで判断付かない。
「いかにも。…お前は何者だ」
目の前の人物は異質すぎるのだ。戦のさなかだというのに、どうして一人でここまでたどり着けようか。
そして何よりもその人物が持つ、身長の倍はあるであろう大剣。
それには肉片がこびりつき、鮮血が滴り落ちていた。
「名前なんかありません。ただ頭からの命令でここまできました」
それだけ言うとその人物は大剣を構える。
「では行きます」
相も変わらず感情のこもっていない声。
しかし布に覆われた顔から覗く視線には間違いなく殺意がこもっていた。
ダッ
周囲に聞こえるような大きな音を立てて、名の無い賊は大地を蹴り、一気に桃蓮に迫る。
だが桃蓮も大陸に名をとどろかせた武人である。自らの愛剣・南海覇王を抜き、迫りくる敵目がけて振り下ろす。
ドゴンッ
鋭い斬撃は敵を完全に捉えることはなかった。
わずかに敵の頭部を掠め、そして顔を覆っていた布がひらりと地面に落ちたくらいだ。
今まで見えなか
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