プロローグ〜邂逅〜
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中国荊州南部の長沙。
この一帯を治める女傑・孫堅は、左右に自らの配下である黄蓋、朱治を従えて賊の討伐に赴いていた。
「数は…2000といったところか。賊にしてはよくまとまっておる」
少し高台から敵を見下ろし、白い髪を風になびかせて言うのは黄蓋。
その口ぶりからは少なからず、賊の集団を統率する人物への感嘆が見て取れた。その言葉に隣に控えていた燃えるような紅い髪を腰のあたりまで伸ばした妖艶な美女、朱治も頷いて肯定する。
「ええ、少なくとも今の皇帝勢力よりはマシな動きね」
朱治は吐き捨てるように言う。この大陸に匪賊が横行し始めてから数年が経過したが、漢王朝は未だにその動乱をおさめられずにいた。
それはつまり漢王朝の権威と軍事力の失墜を示しており、それが匪賊の横行に拍車をかけていた。
「今はこうして各地で細々と賊がはびこっているけれど、そのうちこの大陸を巻き込んだ一斉蜂起が起こる。ならば我らはここで少しでもその災いの芽を摘み取るのみ」
「「応」」
孫堅の言葉に傍らにいた二人はそれぞれの得物を構える。
それに呼応して、彼女らの軍勢も抜刀し戦闘態勢に入る。
・・・・・・とそのときだった。
「申し上げます!」
今から攻め始めんとする孫堅軍の本陣に斥候が息を切らして駆け込んできた。彼が来た方角からは砂塵が舞っている。
それを見て戦闘経験豊富な3人はすぐに状況を察する。
「別動隊じゃと!?」
背後からの突然の奇襲に部隊は混乱している。それと同時に敵本隊も動き始め、孫堅軍に挟撃を仕掛ける。
そして敵の別動隊は本陣目がけて真っ先に突撃を敢行している。普通の軍勢相手なら、この時点で賊の集団は勝ちを拾えていたのかも知れない。…そう、あくまでも『普通』の相手ならば…
賊の誤算はただ一つ。
孫堅らは場数を踏み、幾度の勝利をつかんできた猛者たちであること。
孫堅は黄蓋、朱治に指示を出し、すぐに軍勢を立て直し応戦を始める。そうなればやはり賊ごときでは正規兵と渡り合うのは不可能。
別動隊は瞬く間に殲滅され、2000いた本隊もあっという間に烈火の如く侵攻する孫堅軍に呑み込まれた。
孫堅軍の誰もが自らの勝利を確信した。
「これで決まったわね」
朱治の言葉がこの場にいる者全ての心を代弁していた。しかしそんな中孫堅だけは気難しい顔をしたままだった。
「…堅殿?どうされた」
「ん?祭か…。どうにもまだ一波乱ありそうでな…」
「お得意の『勘』か?」
「…ああ」
孫堅が黄蓋を『祭』
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