弐ノ巻
ひろいもの
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に目を落とした。
「なぜ、助けた」
「助けたつもりはないわ」
「そうか」
「そうよ」
「そうか」
「…あんた、何しに来たの。目的は父上?あたしじゃなくて、父上を殺しに来たの?」
「いや、村雨を出てきた」
発六郎は落ち着いた声で言った。
「はぁ?なんでよ!」
「なんで、だろうな。もう嫌になった。前田に火をつけたのは俺じゃない。若だ。若は止められなかったが、何人か助け出せた…だがおまえの兄と母は、間に合わなかったようだ。すまない」
「やめて!謝らないで。謝られたらあたしは許すしかない。あんたを許したらあたしは…誰を憎めば良いの。こんなこと言わせないで、やだ…」
「すまない、瑠螺蔚。いいよ、俺を憎め」
「なんで謝るの!あんたのせいじゃないんでしょ?あたし今あんたに酷いこと言ってるのよ!怒りなさいよ!なんで…」
あたしは唇を噛みしめて俯いた。
もう、やだ。あたし、汚い。心がどんどん汚れていく。
誰かを憎まなきゃ生きていけないなんて悲しすぎる。あたしにはちゃんとあたしの足があるのに。
「もう、いい。わかった。あたしあんたを許す。今あんたが話してくれたことを信じる。あたしは誰かを憎み続けて生きていたくないから。兄上にも生きると誓った。あたしがこんな汚い心のままじゃきっとみんなが悲しむから、許す。あんたを、許すわ。だから、あんたも死ぬなんて物騒なこと言わないで前向きに生きなさいよ。何が嫌になったか知らないけれど、家出してないで、家族の元に戻りなさいよ」
「俺は、村雨の本当の子じゃない。家族はいない。だから、今となっては行くところもない。名すら、俺のものではない。だから瑠螺蔚、今後は俺のことを速穂児と呼んでくれ」
「速穂児?村雨での名は、速穂だったじゃない。かわらないわ」
「いや、いいんだ」
「ええ?」
「いいんだ」
速穂児は笑った。初めて見た気がする、憑き物が落ちたような優しそうな笑顔だった。
そんな顔も、出来るんじゃないの。
「よし!とりあえずこの件をはっきりさせましょ。もうこっそり父上連れて村雨の正室に会いに行ってくるわ」
「俺も…」
「あんたは大丈夫よ?」
「いや、俺も行く。村雨へ穏便に忍び込むには勝手を知るものがいたほうがいいだろう」
「でも」
身の安全は保
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