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王道を走れば:幻想にて
第四章、その7の2:丘の野戦 ※エロ注意
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奴等だ!」

 その男の声は夜の空によく響き、宴の喧騒を一気に沈める。盗賊たる男達は突然の冷や水を受けて、神妙に顔を見合わせた。

『おい、今のマジかよ』『エルフっていうと、ソ=ギィってやつか?』『だとしたらやべぇな。私兵団が精強だって噂だったし』『おい、今日奪った食糧だけでも運んだ方が・・・』
「静まれっ!!一々、騒ぐな!!」

 男の一喝が再び静けさを産む。一挙に集中する視線を受けながら、指揮官たる地位にある男は胸中で慌てた。

(くそ、一体やつらはどのくらいの数で来るんだ!?俺にどうしろっていうんだよ!)

 斥候は十中八九陣地に戻ったであろう。つまり近日中に敵方は襲来してくる。問題は、男は敵方の兵の総数を知らないという事であった。
 だがそれを公表すれば更なる混乱と、反逆の怒りを買うと予測できてしまった。ゆえに、取る態度は一つ。気丈にして、威厳を保つ事である。

「皆落ち着け、冷静に事態に対処しよう。俺等の目的は食糧の奪取、それだけに限る。何も敵に拘る必要は無い!」
『だが、どの道あいつら軍隊を送ってくるぜ!どうすりゃいいんだよ?』
「・・・最小限の人数で食糧を護送するんだ。無事に食糧が仲間の下へ辿り着けなきゃ、俺らが此処を襲った意味は無い!それに、犠牲を払った意味も無いじゃないか!?」

 その通りである。村が無抵抗である筈が無かった。不幸にして猟師が滞在していたこの村は、物量で押し潰される寸前まで抵抗し、盗賊側にも十数人程度の犠牲者が出ているのである。それを看過出来る仲間達では無く、陵辱の一つの理由ともなっていた。
 男は集う視線に息を詰まらせぬよう、渾身の勇気を振り絞った。

「百だ!百人で食糧を運び出して、仲間の下へ送れ!残った者達は直ぐに準備を整えろ!!迎撃の準備を整えるんだ!!」
『おいっ、戦うのかよ!?』『だがそうしないとあいつらが飢え死にしちまうぜ』『でも態々迎撃つったって・・・』『んだよ、俺まだ女抱いてないっての』
「何してやがる!?文句がある奴は名乗り出ろ!此処で斬り殺してやる!!!」

 男はあらん限りの蛮声を張り上げた。盗賊達は渋々といった形で杯を置いて準備に走る。
 男は人知れず安堵の息をついた。これだけの大所帯が一斉に逃げたとしても、敵方の追撃があれば一挙に一網打尽にされ、食糧を奪われる可能性があった。それならば迎撃のために準備をした方が遥かに当初の目的、食糧の奪取という目的を完遂できると考えたのである。
 男が見上げる夜空には、皓々とした星星の海があり、その中に背筋をぞっとさせるような赤い月が浮かんでいた。

「・・・赤い月とは、縁起が悪いな。血を見る羽目にはなりたくないな」

 厭な予感をその心に抱きながら、男はエルフの仲間達の下へと戻っていく。取り残された
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