4 「黒衣の青年」
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…)
油断なく男を見つめるエリザは、その顔をまじまじと観察し始めた。静かな寝息が溢れているから、起きる心配はないだろう。
(顔半分隠してるけど……もしかして…いや、もしかしなくとも……相当かっこいいわ……)
男というより、まだ青年と言ったほうが良いだろう年齢は、おそらく20をひとつふたつ過ぎた程度。髪の色は黒。ざっくばらんに切られていて、肩甲骨のあたりまで伸びているのもあれば短く寝癖のようにはねている毛もある。前髪は妙に長く感じた。目に入らないのだろうか。マスクをするように顔の下半分を黒い布できつく覆っていたが、その上からでも鼻筋はすっと通っていることはわかる。
(……男のくせに、睫毛長いじゃない…)
毎朝苦心してビューラーで長く見せているエリザとしては、思わず唸ってしまうポイントだ。
(目の色は、蒼……か)
先程月明かりに目の色が伺えたのを思い出す。夜空の藍とよりも青く、青熊獣の青よりも蒼い。透き通った青空とも違うそれは、文献でしか読んだことのない“海”のような青なのだろうと思った。孤島に行けるほどのランクになればエリザも目にするだろうが、彼女にはまだ少し早い。
気がつけば坂はなだらかになってきており、もう殆ど渓流を下りきっていた。ここが最後の崖だろう。
ピィ――――…
鳶とはまた違う声が夜の渓流に響き渡った。パチリと、蒼い瞳が開かれる。
「な、何?」
「迎えだ」
「え?」
「村はここからまっすぐだよね。俺が把握できる範囲ではモンスターもいないようだし、じゃあこれで」
「あ、ちょっと!」
何も考えずに飛び降りようとする腕を掴む。
「ん?」
ムニャムニャと起きだしたルイーズは、青年のコートのように羽織っている黒い布の中にもぞもぞと入り込んだ。
「…いえ、なんでもないわ……。…助けてくれて、ありがとう」
「いやいや、そんなこと。……寧ろ俺たちが原因みたいなもんだから」
(俺たち? 原因?)
ぼそっとつぶやかれた言葉に違和感を覚え、エリザは聞き返した。
「なんでもないよ。そうだ。あまり渓流の奥には近づかないようにね。最近は物騒になったから」
「え…なんでそんなこと……。あんた、ヨルデ村のハンター?」
「違う違う。……ただの、渓流の一軒家に住む人嫌いの物好きさ」
それだけ言うと、ふわりと荷台から飛び降りた……崖の方に。
「ばッ!!? あ痛ッ」
思わず身を乗り出して下を見ると、落ち行く青年の影を視界の端から黒い何かがさらった。そのまま力強く羽ばたくと、Uターンして渓流へと向かう。
「あれは…」
リオレイアと一騎打ちをしていた筈の、黒い飛竜だった。その背には確かに青年を乗せて
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