4 「黒衣の青年」
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ルー達が過ぎた悪戯をしているのは承知しているから。……申し訳ない」
「えっ、いやっ、あのっ、こちらこそ! 命を救っていただいたのにあんな態度をとってしまって、すみませんでした」
「…このままだと、謝罪合戦になっちゃうね」
クスリと笑い声を漏らすと、ルイーズの首根っこをつまみあげ、荷台に放り投げた。
「にゃばばばば!」
「今は早く渓流から逃げよう。村につくまでは俺が護衛するから。安心して眠るといい」
「えっ」
いくらなんでもそこまで2人もこの男に気を許しているわけではなかった。
この時代、ただの善意だけで【陸の女王】リオレイアの眼前に飛び出して人を助けるなんて酔狂な人間は、そうそういないだろう。今回はたまたまあの黒い飛竜が飛び出してきて縄張り争いだかなんだか知らないがレイアと戦ってくれていたおかげで逃げてこれたものの、次同じようなことがあっても生きて帰れる保証はない。皆無に等しいだろう。
なにせこの男、見たところ羽織っているのはこの黒い布切れのみで、動作から察するに武器も防具も何も持っていないのだ。身軽さだけで突破してきたようなものだった。
そもそもなぜ防具すら無いまま人間がこの渓流にいるのかという疑問は、混乱に次ぐ混乱に脳が思考を放棄しかけている2人には浮かばない。だが、貞操の危機となっては話は別だ。
リーゼとエリザは方向性は違うがどちらも“美少女”のくくりに入る。リーゼは10人中8人が「かわいい」というだろう可憐さをもつし、エリザは10人中9人が「美人」だと言うだろう(エリザ当社比)。
2人を助けて一体何を要求してくるのか。ガーグァ車についてホッとしたのは事実だが、一難去ってまた一難。今度は乙女の純潔が奪われかねない緊張感に、2人は身を固くした。
「よっこらしょ」
何やら老人めいた言葉を口にしつつも軽々と荷台に飛び乗ると、ベッドがわりに敷き詰められている藁の上に横たわった。
(……は?)
今この男は「自分が護衛をするから寝ていろ」と言わなかったか? なぜ睡眠を進めた本人が寝る体勢に入っているのだろう。
意味が、わからない。
「大丈夫。近づいたらちゃんと起きるから」
「はぁ……?」
困惑気味にならざるを得ないエリザの返事にも軽く頷き目をつぶった。腕を組んで枕替わりに膝は立たせて足を組んでいるその姿からは、あからさまにリラックスしているようにしか見えない。ルイーズも男の頭のすぐ横に横になると、じきに船を漕ぎ始めた。
残された2人は顔を見合わせる。が、疲れが出たのか、すぐにリーゼも眠ってしまった。エリザはというと痛みでそれどころではない。荒い息をこぼしながらもじっと男をみていた。
(……意外と、若いのね
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