第四幕その三
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「では行こう、マリーナのところへ」
「はい」
「そして私は私の幸福を手に入れる。それでよいのだな」
「それこそ神の思し召しです」
「神か」
グリゴーリィは神の名を聞いて考える顔になった。
「陛下、何か」
「立て」
「!?」
「立てと言っている」
「わかりました」
ランゴーニは言われるがまま立ち上がった。そして二人は立ったまま正対した。
「神と言ったな、今」
「はい」
ランゴーニはこくりと頷いた。
「愛のある俗世を離れた神父であるそなたが。その様なことを言うとは妙な気がする」
「妙なことではございませんぞ」
だがランゴーニはそれは否定した。
「俗世を離れていても。愛を語ることはできます」
「そして導くこともか」
「左様」
彼はまた頷いた。
「むしろそれこそが神に仕える者の責務です」
「わかった、では責務を果たしてもらおう」
グリゴーリィは言った。
「今から私を彼女のところに導いてくれ」
「はい」
こうして二人は部屋を出た。だがすぐに遠くの方から賑やかな声が聞こえてきた。
「いけませんな」
ランゴーニはそれを耳にして顔を顰めさせた。
「どうしたのだ」
「向こうから宴会に招かれているポーランドの貴族達がやって来ます」
「何だ、そんなことか」
しかしグリゴーリィはそれを一笑に伏した。
「それなら問題ない。敬意を以って迎えよう」
彼はもう皇帝になったつもりであったのだ。
「彼等の地位や名誉に相応しく」
「後ではそれはよいでしょうが」
ランゴーニはそれを思い止まらせようとする。
「今はお止め下さい」
「どうしてだ?」
「姫を裏切ることになります」
「マリーナを?」
「詳しい話は後で。どうぞこちらへ」
「う、うむ」
彼等はそこにあった空き部屋に身を隠した。そしてそこでポーランドの貴族達をやり過ごすことにした。見れば彼等は宴が終わった後なのか上機嫌で話しながら廊下を進んでいた。
「いやいや、今宵は愉快でした」
背の高い老貴族が笑顔で言う。彼とマリーナが腕を組んでいた。
「なっ」
部屋の扉を微かに開け覗いていたグリゴーリィはそれを見て思わず部屋から出そうになった。だがそれはランゴーニに制止された。
「落ち着き下さい」
「う、うむ」
見ればマリーナも朗らかな笑みを作っている。そしてその老人と話していた。
「御気持ちは嬉しいですが」
彼女は言う。
「貴方はもう御高齢。私では相手になりません」
「いやいや」
だが貴族は笑いながら返す。
「そういうわけではありませんぞ。こう見えてもまだ心は若いですからな」
「さて、どうでしょう」
軽く笑って返す。
「それに私は今ポーランドから出たいと思っていますし」
「そして何処に」
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