第四幕その一
[2/2]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
た輪を作った。今度はマリーナを囲んだ。
「お城の美しいお姫様」
輪は二重である。そしてまた二つに分かれて歌う。
「河のほとりの花よりも」
「もっと綺麗で白いお姫様」
マリーナはそれを黙って聴いている。その青い目は何かを見据えていた。
「サンドミールの栄光と歓喜を一身に燦然と咲き誇る」
ここは一つになって歌っていた。
「才気溢れて気高い勇者達も」
「姫の前ではかすむだけ」
「けれど姫様はそれにはお構いなく」
「ただ至福の笑みを浮かべられるだけ」
「有り難う」
マリーナは歌が終わったところでそう応えた。だがそれには心が篭っていなかった。
「あの青い河と白い花に比べてくれて」
「はい」
「それは御礼を言うわ。そして」
「何でしょうか」
娘達はマリーナの前に集まった。そして畏まって声をかけてきた。
「他の歌を聴きたいのだけれど」
「他の歌ですか?」
「そうよ、昔の歌で」
彼女は言った。
「ばあやに教えてもらった歌なのだけれど」
「それはどんな歌ですか?」
「ポーランドの歌よ」
彼女はここで笑った。まるで欲しいものを手に入れんとするかの様に。
「ポーランドの戦士達の歌よ」
「それは私達には」
「歌えないの?」
「はい」
彼女達は申し訳なさそうに答えた。
「戦いの歌は」
「ポーランドの戦士達の偉大さと勝利、そして栄光の歌」
マリーナは言う。
「それが聴きたいのよ、私は。けれど貴女達は無理なのね」
「すいません」
「だったら仕方無いわ。下がりなさい」
彼女達に下がるように言った。
「お菓子を用意してあるから」
「有り難うございます」
それを聞いて娘達は上機嫌で下がった。そしてマリーナは中庭に一人になった。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ