弐ノ巻
ひろいもの
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「起きて」
あたしは乱暴に言った。
男は無言でのそりと起き上がった。
「飲んで」
あたしが突き出した薬湯を、男がじっと見る。
「飲んで」
あたしは重ねて言った。
それでも動かないので、あたしは椀を力の入っていない男の腕に無理矢理持たせる。
すると観念したのか、ゆっくりと器に口をつける。
あたしは空になった椀を持って部屋を出た。
部屋の外でおろおろと様子を見ていた由良もついてきた。
あのあと、前田家の前で見つけた男を休み休み佐々家に引きずってきて、空き部屋に寝かせ、擦り傷は軽く手当てした。
別段大怪我をしているわけでもなく、男は暫くして目を覚ました。けども。
「…あの、あの瑠螺蔚さま」
おそるおそるといった体で、由良があたしに声をかけた。
「なに」
「あの、込み入ったことを伺うようですが、あの倒れていた方とは、お知り」
「しらないわ」
あたしが早口でそっけなく言うと、由良は気圧されたように一旦口を閉ざした。
「あ、の瑠螺蔚さま、私、あのものを高彬兄上の供にしようかと思っていたのですけれど…」
「…供!」
皮肉な笑いが唇に浮かぶ。
そこらから拾ってこずとも、まさか佐々家が人手不足でもあるまいに。しかも高彬のだなんて。由良があたしの知らない佐々家の内情を与してこんなことを言っているか、それとも温室育ちだからか本当に純粋に言っているのか。
「いいんじゃない?供にでも下働きにでもすれば。その代わり、明日起きてみたらみんな死んでた−…なんてことにならないとも限らないわよ」
あたしはくるりと振り返るとにいと笑った。それを見た由良は言葉を飲み込んで足を止めた。
「瑠螺蔚さま!どちらへ…?」
「台所」
そう短く言うと、あたしは由良を残してさっさと歩き出した。
別に由良が何かしたわけじゃない。あたしの態度に戸惑っているのもわかる。でも、ごめん由良。今はあたしも、自分の感情がわからない。
台所には、誰もいなかった。
でも、予め頼んでおいた粥がほっかりと炊けており良いにおいを漂わせている。
釜の蓋を持ち上げてみると、ふわりと湯気が頬を包むと同時に見えた色は、白。
白粥な
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