第10話『怒りの矛先』
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当の夢が遠のいてしまうんじゃないか?
あんなに気のいい奴らがそうそういるはずがない。
ナミも麦わらも夢から遠のく。それはあってはならないことだ。
「……そっか」
そうだな。
そう考えると、答えはひとつだけだ。
悩むだけ時間の無駄だった。
「ノジコ、俺は――」
――アーロンを潰すよ。
そういおうとしてベルメールさんの家のガラスが割れる音が聞こえた。
「なんだ?」
「さあ?」
首をかしげて顔を見合わせる。
二人してみかんのかごを引っさげて、家に戻ると、そこに。
彼女はいた。
「――っ」
心臓がはねた。
「あーあーあー、派手に荒らしてくれたね、ナミ。どうした? ベルメールさんに怒られるわよ?……ってあら、いないのか。あぁゲンさんのとこに行ってるのか」
「別に! ちょっと休みにきただけ」
顔を伏せているからまだ見えない。でも、それは確実に彼女だった。
短いオレンジ色の髪。自分の家にいるかのようにくつろぐ彼女は、そう、ナミだ。
「……っ」
会えた。
俺の息を呑んだ音に気づいて顔を上げた。
美人になっている。
いや、これはびじきれかわいい。
美人と綺麗とかわいいを混ぜてしまうくらいだ。うむ、言葉は3つを混ぜないと自分の心に誓ったすぐそばから破ってしまった。さすがナミだ。
……あれ、美人と綺麗って意味一緒じゃないか? ……まあいいや。
「……誰? ノジコらしくない、こんなよそ者にベルメールさんのみかん触らせるなんて」
俺を指して、実に不快そうに言う。俺をにらみつけて、それからなにかに思い当たったのか、そこの椅子にかけてあった灰色の甚平を俺へと投げる。まだ少しぬれているけど、海水に浸されたせいで感じていたぱりぱり感は綺麗になくなっていた。
洗ってくれてありがとうベルメールさん。
「これ、あんたのでしょ。みかんどうも。さっさと帰ってくれる?」
「ちょ、ちょっとナミ! こいつは――」
「――わかった」
ノジコの言葉を遮って、俺はうなづく。
「あ、あんたまで!?」
「いや、ほんとにいいんだ。皆元気だった。それでいい。その事実があればいいんだ」
ナミも俺に気づかない。多分さっきの口ぶりからして俺のことを別村のコノミ諸島民と思っているんだろう。
当たり前といえば当たり前だ。
ベルメールさんとも話してたけど気づかれたらエスパーかなにかに思えてしまってむしろ少し怖い。
「なぁ、ナミ」
「……あたしの名前を気安く呼ばないでくれる?」
ナミっていう名前を知っていることには驚かない。まぁ、ノジコが何回か呼んだからそれで知っているだけと思われたんだろう。でも、俺はずっとお
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