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レンズ越しのセイレーン
Mission
Mission7 ディケ
(7) キジル海瀑(分史) B
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レイシィが愛する者たちが、誰も心から笑わなかったあの世界。

 ユティは彼らに心から喜んでほしかった。彼らが辛い声で「許してくれ」と、「すまない」と言ってユティを抱き締めることがないようにしたかった。

 心も体も造られたモノだと自覚している。
 それでも、ユティはそれを善しとした。
 ユティがそれを善しとした。

(ユースティアはとーさまたちをシアワセにするために正史(ココ)に来た)



 水底の砂を全力で蹴った。
 ざぱん。ユティは海面に浮上する。吸った酸素を自身の呼吸より先に、大音声に費やした。

「ミュゼ! でっかい火ちょうだい!」

 上からネガティブホルダー斉射で援護してくれていたミュゼがこちらを見下ろす。
 視線が絡んだのは一瞬。ミュゼは両腕を掲げて、頭上に炎のマナを集中し――

「レイジングサン!!」

 炎がドーム状に爆ぜ、海瀑幻魔を包み込んだ。


 キィィィイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!


 火が弱点の幻魔は絶叫を上げて悶える。その隙にユティは岸壁にフリウリ・スピアを突き刺し、逆上がりの要領で体を浮かせる。そして、足裏を岸壁に付けて全身を撓ませると、ゴム弾のように自らを発射した。

 ドシュ!
 幻魔にフリウリ・スピアが深々と突き刺さる。
 ユティは燃え盛る幻魔に両足を突っ張った。足裏が焼けても、肌や髪を火に焙られても、脚力は緩めない。

「ぬ、く、ぅ、ぁ…あ、ぁ、あぁぁぁあああああああああああああっっっ!!!!」

 釘抜きの要領でフリウリ・スピアを力任せに引っこ抜いた。
 勢いのまま浮いた体が海に落ちる。気が抜けたせいか体はどんどん沈んだ。

 フリウリ・スピアの先には黒い歯車と、白金の歯車の集合体。黒い歯車が砕けると、白金の歯車球体がゆったりとユティの手に落ちてきた。

 また一つ、世界がひび割れて砕けて消失した。

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