Mission
Mission7 ディケ
(7) キジル海瀑(分史) B
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(『道標』集めの間にルドガーが瀕死になる事態があるなんて聞いてない)
浅瀬を這いずり回る海瀑幻魔へとフリウリ・スピアを突き出す。幻魔の肉を抉るたびに、ぶじゅっ、どぱっ、と血が噴き出した。顔が、胸が、腹が、足が、返り血で粘ついた。
(リーチは相手が上。射程に入ると海中に引きずり込まれる)
思う間にも幻魔の触手が足に絡まる。舌打ち一つ、フリウリ・スピアで斬って逃れ、海の中に着地する。
(砂が。足を取られてうっとうしい)
幻魔の体当たり。スピンをかけた巨体の回転をモロに受け、ユティは断崖まで吹っ飛ばされた。
「ガ――ヴォェェッ!!」
内臓を吐いたかと錯覚した。
痛みが過ぎて正しい五感が戻った時には遅かった。ユティは四肢に力を戻し損ねて海面に真っ逆さま――のはずだった。
だが、ユティが海瀑に没することはなかった。
背中から両脇に手を入れたミュゼが落下を食い止めていたからだ。
「ミュ、ゼ」
「突っ込み過ぎ。死ぬわよ」
「それは、困る」
ミュゼがユティを砂浜に下ろして、また上空に舞い上がった。重力系の精霊術を涼しい顔で連発するミュゼは、さすが大精霊。
ユティはフリウリ・スピアを構え直し、再び海瀑幻魔に突撃した。
幻魔がスピンをかけて来た。それは先ほど一撃食らってすでに見切っている。ユティは触手を飛び、屈み、躱して、じわじわと幻魔の懐に入っていく。
(ここ――だ!)
甲殻の裏側、ぶよぶよした肉が剥き出しの部分に、ユティはフリウリ・スピアを全力全開で突き立てた。
キュエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッッッ!!!!
脆い部分を容赦なく抉られた海瀑幻魔が悲鳴を上げる。まだだ。まだ終わっていない。
(ルドガーが貝類を調理する時。殻から中の貝柱をナイフでくり抜く、イメージ!!)
グゾリ、グゾリ、と高速でフリウリ・スピアを殻の内面に合わせて滑らせ、中身を殻からこそげ落としていく。ゴッ、ゴッ、ゴリリリリリリリッ。
アンギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!
さすがの海瀑幻魔も体内を食い荒らされる痛みに耐えかねてか、触手を総動員して絡めとり、ユティを外へと弾き出した。
まずい、と思うが早いか、巻きついた触手はユティを海面に容赦なく打ちつけた。
派手に水飛沫が上がり、無音の海中に沈む。
フリウリ・スピアを駆使して何とか触手の拘束は解けたものの、体が沈んでいくのが止められない。
――“何故そこまでカナンの地に拘るんだ。願いはないんだろう”――
(ワタシがカナンの地を目指す、理由)
空はいつだって毒色で、太陽など見たことがなかった。ユースティア・
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