第百十六話 三杯の茶その七
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「融通が利かないんだね」
「その通りです」
「参ったね、それは」
「ですから生きにくい方です」
「左様か」
ここで信長がまた言った。
「使いにくい者の様じゃな」
「非常に素晴らしい資質と人格の方ですが」
「それでもか」
「世渡りがどうも」
それは下手だというのだ。
「そうした方です」
「ではその者に会おう」
そうしたことも聞いたうえで言った信長だった。
「そして用いるかどうか決めよう」
「それでは」
「そろそろじゃ」
その寺に着くというのだ。信長は前を見ていた。
その上で一行と共にその寺の前まで来た。その寺はごく普通の寺と言える外観だった、そして中身も同じだった。
その中に入ってまた言う信長だった。
「ではじゃ」
「ああ、わし等は旅のお武家さんだな」
煉獄が言ってきた。
「そういうことだな」
「その通りじゃ。しかし煉獄は」
「俺がどうかしたか」
「暫く喋らぬ方がよいな」
「それはまたどうしてなんだ?」
「妙に目立つ」
だからだというのだ。
「喋ればその荒さから目立ってしまうからな」
「俺も治す気がないんだがな」
そもそもそうしたことを気にしてはいない、煉獄はただ己の剣で戦いたいだけの者なのである。そしてだった。
ここで信長はこうも言ってみせた。
「まあ煉獄が大人しいとのう」
「このままでいいんだな」
「そうじゃ。それでよいからな」
「わかったぜ。じゃあ俺はこのままでな」
「行くのじゃ。では寺の境内に入ってじゃ」
石田に会うことになった。忍の者達はお付きでしかないので寺の門のところに控え信長と可児だけで出て来た住職にこう言った。
「我等は旅の武家じゃ」
「左様でございますか」
住職も疑う素振りは見せない。信長の考えはまずはそのままいけた。
その僧侶は信長にこうも言ってきた。
「それではここに来られた理由は」
「実は喉が渇いてのう」
それでだというのだ。
「茶を所望したくなってな」
「それで来られたと」
「その通りじゃ。水はあるか」
「茶があります」
住職は静かに答えた。
「それが」
「ほう、茶か」
「今いる小僧、その者が大層茶を入れるのが上手く」
そしてだというのだ。
「拙僧も飲んでおります」
「ではその茶を貰おう」
信長はかねてから考えていた通りだったので内心微笑みながら住職に対して述べたのである。
「早速な」
「では」
住職はここで手を叩いた。すると。
一人の若い僧侶が出て来た、目は鋭く強い光を放っている。細面で鋭利な印象を受ける顔である。その彼を見て。
信長は住職に対してこう言ったのだった。
「この僧がじゃな」
「はい、茶を煎れます」
住職は信長、彼が見るところ旅の武士に対して
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