暁 〜小説投稿サイト〜
八条学園怪異譚
第二十一話 ランナーその十
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
「じゃあ今日はこれでね」
「帰るから」
「お土産いるかい?」
 二人は別れの挨拶をするが口裂け女がここで言ってきた。
「ベッコウ飴あるよ」
「あっ、今日は自分で持ってるのね」
「そうなのね」
「うん、今持ってるのよ」
 そう言ってそのベッコウ飴の袋を二人に差し出してくる。
「で、どうだい?」
「じゃあ好意に甘えてね」
「そうさせてもらうわね」
 二人も好意を受け取ることにした、そしてだった。
 聖花がそのベッコウ飴を受け取った、それから二人で頭を下げた。
「有り難う、それじゃあね」
「二人で楽しませてもらうから」
「うん、そうしなよ」
 口裂け女はここでも目を細めさせて言う。
「ベッコウ飴は飴の中でも一番美味しいものだしね」
「本当にベッコウ飴好きなのね」
「そこまでなの」
「そうだよ。また会おうね」
 これが最後の別れの挨拶だった。双方言葉を交えさせて別れた。
 愛実と聖花は次の日の朝一緒に登校していた、その時に愛実が難しい顔で聖花にこんなことを言ったのだった。
「あの先生心配よね」
「ううん、走ってるだけだけれどね」
「あのままどうなるのかしら」
「とにかく走りたいみたいだけれどね、減益で」
「けれどそれはね」
「それはって?」
「消えるものだからね」
 聖花はこう愛実に言った。
「だから走るだけ走ったら」
「消えるの?」
「確かにオリンピックに最後まで出られなかったのは残念だけれど」
 このことも言う聖花だった。
「けれどそれでも。昇華は出来るから」
「コーチとして後進を育成して」
「あの人コーチとしての手腕も知られてるからね」 
 名選手がよい指導者になるとは限らない、だがそれでもだというのだ。
「きっとね。いい人を育ててね」
「今度はコーチとしてオリンピックに行くのね」
「だから大丈夫だと思うわ」
 そうした目的の昇華が出来るからだというのだ。
「安心していいわ」
「だといいけれどね」
「そもそもこの学園ってあれじゃない」
 このことも言う聖花だった。
「悪い妖怪や幽霊は」
「そうだったわね」
「もっとも途中で変わる可能性もあるけれど」
「それでもそうなったら」
「ええ、いなくなるみたいだから」
 その場合も大丈夫だと言う聖花だった。
「そのことも安心していいから」
「そうよね。けれどあそこまで走りたいなんて」
 愛実は自分のことから聖花にこんなことも言った。
「ちょっと私には」
「愛実ちゃんは走るの確か」
「昔から好きじゃないから」
 だからだというのだ。
「運動自体がね」
「そうよね。文系よね」
「だからかるた部だし」
「まあかるた部も結構身体動かすけれど」
「お料理とかお掃除で動く分にはいいのよ」
 こうしたこと
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ