第二幕その六
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ろ」
「ああ、イボか。悪いな」
「いやいや」
「そうか、イボか」
役人はそれを聞いて頷いた。
「それでは分かり易いな」
「そうですね、これ程になく」
(不味い)
グリゴーリィにはそれが自分のことであるとわかった。もう悠長なことは言っていられない。すっと姿を消した。宿屋の左手へとその身を消してしまった。
だがここにいる者達はまだそれには気付いていない。ワルアラームが読むのをまだ聞いていた。
「そして額にも一つ」
「額にもか」
「はい、そうなんです。ん!?」
ここで彼はあることに気付いた。
「どうした」
「いえ、それでですね」
気になりさらに読み続けていく。
「次に書いているのは」
「次は」
「一方の手が」
「今度は手か」
「はい、もう一方より短い。以上で終わりです」
「そうか・・・・・・待て」
役人もここで気付いた。
「おい、それは」
「はい、今ここにいる」
「若い僧侶ではないか!ちょっと来い!」
役人はグリゴーリィを呼んだ。
「この異端者が!縛り首にしてくれる!」
「そうだ、捕まえろ!」
ワルアラーム達も叫んだ。
「異端者だ!異端者が逃げたぞ!」
「すぐに追え!そして処刑しろ!」
彼等は口々に叫ぶ。だがもうグリゴーリィの姿は何処かへと消え去ってしまっていた。彼の姿はもうロシアにはなかった。そしてロシアの、同時に彼の運命もまた暗転がはじまった。
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