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ヘタリア大帝国
TURN60 義兄と義妹その四
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 彼女はその時ダグラスと一緒だった。そのうえで路地裏に潜み追手を見ながらこう彼に言うのであった。
「あと少しなのよね」
「ああ、脱出ポッドは用意してある」
 キャロルの片隅に蹲る様にして周りの様を伺いながらダグラスも言う。
「そこに辿り着ければな」
「USJに行けるのね」
「あっちには祖国さんもいる。逃げられれば何とかなる」
「あいつがいるのが癪だけれどね」
「あいつ?東郷司令か」
 勘のいいダグラスにはすぐにわかることだった。
「君はあの司令が嫌いな様だが」
「知ってるでしょ、あいつの奥さんだった人はね」
「確かスカーレット=キリングだったな」
「そうよ、あいつと結婚したのよ」
「そしてガメリカに里帰りしている時にだな」
「乗っている客船が事故で消息不明になってね」
 宇宙の中でそうなる、それは即ちだった。
「言うまでもないわよね」
「そうした事情か」
「一族は全員結婚自体に反対したのよ」
「大切な財閥の巫女さんが他国の何処の馬とも知れない、しかも女好きで有名な不良士官がその相手じゃな」
「それでも姉さんは一族の反対を押し切って日本に行ったわ」
 そして東郷の妻になったというのだ。
「忌まわしいことにね」
「特に君が反対したんだったな」
「よく知ってるわね」
「軍にいれば誰でも知ることだと思うが」
 国防長官である彼女のことを知らないではいられないというのだ。
「それで俺も知っている」
「そういうことなのね」
「それであの司令は嫌いか」
「ええ、大嫌いよ」
 キャロルは忌々しげな顔で言い切った。
「あいつのところに行くのだけはね」
「まあ気持ちはわかるがな」
「それでもっていうのね」
「君も今の政府には戻りたくないだろ」
「そっちの方が嫌よ」
 キャロルの顔の感じ、その忌々しげなものがさらに強くなる。
「本当にね」
「今のプレジデントは狂ってやがる」
 ダグラスが見てもそうだった。
「あのままいけばとんでもないことになる」
「もうなってるけれどね」
「俺も講和には賛成だ」
「じゃああたし達と一緒に来る?」
「いや、俺はガメリカに残る」
 だがダグラスはこうキャロルに返した。
「やることがあるからな」
「というと大統領選挙に出るのね」
「政党には所属しないがな」
 ルースの民自党にも野党の和共党にもだというのだ。
「あの大統領をそれで引退させてやる」
「それであんたがガメリカの舵取りを取るのね」
「ああ、そのつもりだ」
「まあ戦争が終わることに選挙がはじまるわ」 
 キャロルはそう見ていた。
「それなら勝てるでしょ」
「主戦派が根強いことは確かだけれどな」
 だがそれでもだというのだ。
「俺は必ず勝つ」
「ええ、今は国民の皆も講和派が主流
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