第三話「やはり俺はカミトポジションか」
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それなりに強力な精霊が封印されているケースも多い。
クレアはつかつかと剣に歩み寄ると聖剣の柄――これからはエストと言おう――を握りしめた。
俺はあらゆる事態に対応できるように重心を落としながら、クレアの死角になる位置へ移動する。
重い静寂が辺りを包む。
「――いくわよ、クレア・ルージュ」
意を決したクレアの唇から流暢な精霊語の契約式が紡がれた。
――古き聖剣に封印されし気高き精霊よ!
――汝、我を主君として認め契約せよ、さすれば我は汝の鞘にならん!
深紅の髪が逆立ち、祠の中に風が吹く。風はクレアとエストを中心に渦巻き始めた。
俺は息を呑んでクレアの姿を見つめた。エストがクレアを主君として認め契約を交わしたならば、身体のどこかに精霊刻印が刻まれるはずだ。カミトが不在の今、クレアと契約しても可笑しくはない。
契約の誓言が最終章に入った途端、緩やかに渦巻く風は突風へと姿を変える。
彼女の持つエストが眩い閃光を放ち始めた。
反応している、ここまでは原作と同じだ。果たして――。
「――我は三度、汝に命ずる。汝、我と契りを結び給え……!」
固唾を呑んで見守るとクレアの誓言が祠に響き渡った。
シャラァァァン!
綺麗な音とともにエストが抜けた。
「……ぬ、抜けた……抜けたわ!」
石から抜けた剣を振りかざし、歓喜の声を上げるクレア。しかし――、
「きゃあ……っ!?」
剣腹に刻まれた古代紋様が一際強い光を放った。思わずクレアは手を離し、聖剣は閃光とともに粉々に砕け散る。
「チィ、やはり駄目か!」
岩陰に隠れていた俺はすぐさま飛び出し体勢を崩していたクレアの腰を抱いて支えた。
「大丈夫か?」
「な、なんでアンタがここに……?」
「それは後だ。今はそれどころじゃないようだぞ」
俺の視線の先を辿る。嫌な予感がしたのか、引き攣った表情で祠の天井を見た。
そこには、一振りの聖剣が浮かんでいた。
先の砕け散った聖剣ではなく、無骨の切れ味のよさそうな鋼の剣。
これがエストの真の姿か。
その姿を目にしたクレアが悲鳴にも近い声を上げた。
「あれは――剣の封印精霊!?」
「属性は〈剣精霊〉といったところか。かなりご立腹の様子だな」
「精霊使いでもないのに何でわかるのよ」
「逆に問うが、あれを見てもそうではないと言えるか?」
「うっ……」
浮遊するエストは切っ先をこちらに向け、ピタッと静止した。そして
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