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失われし記憶、追憶の日々【精霊使いの剣舞編】
第三話「やはり俺はカミトポジションか」
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から遥か東方に位置するアルトハイム小国という小さな国さ。その中の小さな町から来たんだ」


「ふーん。ねえ、なんで旅に出たの?」


 元々好奇心旺盛なのか、大きな目を輝かせて俺の顔を覗き込んだ。別に話てもいいんだが、


「目的か……秘密だ」


「えー、なによそれー!」


「ふふ、何も秘密が多いのは女だけの特権じゃない。それに、ミステリアスの方が面白いだろう?」


 そう言って微笑むと、クレアは再び頬を朱く染めて視線をずらした。今、何かしたか、俺?


 それから歩くこと十分。漸く目的地にたどり着いた。


 聖剣が奉られた祠は森の中のひらけた場所に位置し、ひっそりとた佇んでいた。祠を中心に円心状で不可侵の結界が張られているのが解る。


 クレアは指先であっさり結界を解くと、一旦足を止めて振り返った。


「ここから先は危険だから一般人のアンタはそこに居なさい」


 そう言うとクレアは返事を待たず祠の中へ入って行った。クレアの身が心配な俺としてはここで待つという選択肢は無く、気殺の法で気配を限りなく殺して彼女の後をついていった。


〈封印精霊〉というのは強大な力だけではなく、多くが荒い気性をしている。中には破壊と混沌を望み、隙あらば自分を使役する精霊使いの首を狙おうとする精霊もいると聞く。とても人間の手に負える存在ではないが故に封印された精霊なのだ。


 何事も無ければいいが、と気配を殺しながら後を辿って行くと、クレアの指先に小さな火の玉が灯った。初級の精霊魔術だろう。


 ゆらめく火球が鍾乳洞のような祠の壁を照らし、全貌を明らかにする。


 そして祠の最奥に、その剣は在った。


 巨大な石に突き付けられた抜き身の剣の刀身には錆や刃こぼれは見当たらない。剣腹には精緻に刻まれた古代紋様があり、弱々しいが青白い光を放っている。


 ――神秘的だ……。そんな言葉が頭に浮かんだ。


 それは感動か。この場面を識っていたのに、それでもこの光景は息を呑む美しさがあった。否、文面と実際にその目にするのとでは意味合いが違う。故にこの感動は至極当然なもの。


 あれが、〈セヴェリアンの聖剣〉……エストか。


 同じく息を呑んで剣を見つめていたクレアもしばらくすると我に返った。


 強大な力を持った七十二柱の精霊を従えて大陸中に混乱と破壊をもたらした魔王、スライマン。歴史に残る唯一の男の精霊使い。その魔王を討ち滅ぼしたのが、この〈セヴェリアンの聖剣〉だといわれている。


 しかし、そういった伝承を持つ聖剣は帝国の至る所に存在する。有名なため町の村おこしとして利用されたりするのだ。本物ではないにしても銘のある剣のため
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