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てな。その時に祝言には呼べと言ったのだ。あれは、あながち狂言でもなかったのだが」
大樹は独り言のように、ぽつりと零した。
「よかったなぁ!ツミ!」
「よかったよかった!太郎!」
「わーっ!?」
「にぎゃっ!?」
虚は足元で踊っている妖どもを蹴散らした。
「食人鬼!こらなにをする!」
「大樹の花を持ってきた」
「それにしても我らをよけて通ればよいであろう!」
「そうだそうだ!せっかくの祝い事を…」
ぶつぶつ言う猫の妖を尻目に虚は公園に足を踏み入れた。
古ぼけた遊具。奥へと進む。
一番奥に、木があった。その根元は、花で溢れかえっている。
見ている間にも、はらりはらりと花が降り積もる。
その上に、虚は大樹から預かった花を置いた。花は喜ぶように綻んだ。
「お主とヒベニの祝言を大樹が見たがっていた」
『彼』はもういない。そんなこと、ここで言っても詮無いことだ。わかってはいたが、虚の口をついて言葉は落ちた。随分、ヒトに毒されてしまったようだ。虚も、ここにくる妖たちも。
『彼』は長い時間を生きてきた。故に『彼』の事を知らぬ妖はいなかった。
誰にともなく、ここに花を飾るのが、『彼』への餞別となっていた。ヒトは大切な人が死ぬと、墓を作り花を飾る。
所詮ヒトの真似ごと。しかし、ヒトと逢った妖には相応しかろう。
風もないのに花弁は揺れる。歌うように、楽しげに。まるで、『彼』に日紅が寄り添っているかのように。
「馬鹿者が」
虚は呟く。
愚かだ。『彼』は自らが消えるのと同時に、日紅と犀から『彼』の記憶を消したのだ。妖と関わりすぎてしまった日紅が、もう面倒なことに巻き込まれないよう、ご丁寧に二度と妖を見ることも、声を聞くこともできなくしてしまった。
そんなことを…あの太陽のような娘が喜ぶとでも思っているのだろうか。
「よかったなー楠美!」
「いやあよかった!よかった!」
そこかしこで妖が宴会を繰り広げている。公園はいつになく賑やかだ。勿論ヒトの目には映らないが。
妖は『彼』が消えたことを喜ぶ。死ねない『彼』がただ一人、真名を明かしてもいいと思える相手に出会ったことにただ喜ぶ。妖とヒトは生きる道が違う
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