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巫哉
巫哉
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なに…」



 日紅は笑おうと唇をつりあげたが、それは途中で儚く消えた。『彼』が、余りにも寂しそうに笑っているから。



 『彼』は視線を日紅に戻した。わかっているのだろうか、『彼』は。自分がどんな顔をして笑っているのか。夜の闇ですら隠しきれないほどの感情。



「俺には瞬きするほどの間なのに。おまえは違う」



「巫哉。巫哉?」



 日紅は『彼』に手を伸ばす。けれどやはり見えない壁に遮られる。日紅は少しでも『彼』に近づこうと、空に両手を着き顔を寄せる。



「俺がいくら望んでも、お前と共に歩むことはできない。おまえも、俺と同じ時間を過ごすことはできない」



「そんなことないよ!命の長さが違うってことを言いたいの?あたしのほうが早く死んでしまうけれど、でも、それまでずっと一緒にいれるじゃない。共に歩めないなんて悲しいことを言わないで!」



「じゃあ、お前が死んだら俺はどうすればいい?日紅」



 日紅は動揺した。なんだか、『彼』が今日は違う。いつもと違う。日紅が死んだらどうしたらいい、なんて、これじゃあ、まるで…。



 まるで『彼』が日紅のことを、好きみたいだ。



 一瞬浮かんだ考えを振り切るかのように、日紅は首を振った。自分で自分の考えに恥じる。そんなことあり得ない!



「巫哉にはみんながいるじゃない。あたしが死ぬのをヤだなって思ってくれるんだったら不謹慎かもだけど、それはやっぱり嬉しい。でも、死んじゃうのは仕方がないよ。そりゃあたしだって死ぬのは怖いし、ずっと犀や巫哉といれたらいいなって思うけれども、自分ではどうしようもないことだもん」



「死ぬのが怖いなら、一緒に生きるか」



「え、どういう…」



「不死の身体にしてやろうか」



 日紅は息を飲んだ。『彼』はまっすぐに日紅を見ている。冗談を言っているような雰囲気ではない。



「…いらない」



 考えるより早く言葉が出た。それは以前、虚に問いかけられたものと同じものだった。その時と違いなく、日紅は顔をあげ、『彼』の目を見て言った。



「あたしは、人間として生まれたから、人間として死にたい。永遠の寿命なんてなくていい。傷つかないからだなんて欲しくない。あたしはあたしでいい。全く違う存在でも、お互い認め合えて、ただ寄り添って生きていけたら、それはこれ以上ない幸せだと思う…」



 『彼』は日紅から目を逸らさなかった。日紅の答えを、問いかける前から『彼』は知っていた。日紅はそんなものに心動かされるヒトではない。それでも口に出したのは、自らの為だった。日紅の揺るがない心を、日紅の口から聞きた
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