第一幕その八
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す」
「そんな、夢だなんて」
「いえ、本当です」
彼は言った。
「嘘みたいだ。こんな姿をした人がいるなんて」
「私も」
ミミの声もうっとりとしたものになっていた。
「この想いに溺れそうです」
「それは愛ですか?」
「多分」
顔を少し俯けさせて答える。
「この想いを愛と呼ぶのなら。そうなのでしょう」
「この上なく甘美な言葉です。愛とは。それこそが僕の夢」
「そして私を覆おうとしているもの」
「行きますか」
「はい」
ミミはまた頷いた。
「一緒に」
「けれど外は寒い」
ロドルフォはここで窓の外を見て言った。
「それでも。宜しいのですね?」
「貴方と一緒なら」
この言葉が決まりとなった。
「何処にでも」
「寒くても?」
「貴方が一緒なら寒くもないですから」
「帰る時も?」
「聞きたがりなんですね」
ミミはショールを着ける。ロドルフォはそれを手伝っていた。
「君のことが気になるから」
「私のことが」
「そう。そして君も」
「ええ」
ロドルフォの言葉にこくりと頷く。
「僕のことが気になるんだね」
「そう。それは」
「僕を好きということなんだよね」
「それは」
本来なら頬を赤らめる時なのだろう。だがミミの頬は赤くはならなかった。これはミミの心とはまた別の問題であった。
「好きと言えないの?それじゃあ」
「いいえ」
その言葉には首を横に振った。
「それじゃあ」
「ええ」
ミミは言った。
「貴方が・・・・・・好きよ」
「僕もだよ」
そしてミミを抱き締めた。
「それじゃあ行こう」
「ええ」
「愛と共に」
「愛に誘われて」
二人は部屋を出た。そして三人を追いかけてカルチェ=ラタンに向かうのであった。
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