第一幕その七
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住処になったからです。貴女によって」
「私によって」
「そして今度は僕が尋ねさせてもらいます」
ロドルフォは言った。
「はい」
「貴女は。一体誰なのでしょうか。宜しければお話下さい」
「私は」
少女はそれを受けてゆっくりと口を開きはじめた。
「私はミミと申します」
「ミミ」
「はい。皆そう呼んでくれます。私の名前はルチアというのですが皆親しみを込めてミミと呼んで下さるのです」
「可愛らしいあだ名だ」
「私は絹や麻に刺繍をして暮らしています。心穏やかに幸せに、布に百合や薔薇を入れるのが仕事になっています」
「素晴らしい仕事だ」
「はい」
これがお針子という仕事であった。当時若い女性が就いていた仕事の一つである。だがこれだけではなく時としてその身体を男に任せて糧を得る場合もあった。これは当時のフランスでは特に悪いことではなかった。パトロンという存在があり、金を持った男に囲われるのはフランスの女としては普通のことだと考えられていたのである。女優もそうした風潮があった。また男であっても芸術家もそうした中にあった。思想家であるルソーも金持ちの貴族夫人をパトロンに持っていたのである。
「私を喜ばせるものがあるのです」
「それは」
「甘い魔力です」
彼女は言った。
「愛や青春について語ってくれるもの、そして夢や空想について語ってくれるものです。つまり詩という名前を持っているものなのです。おわかりでしょうか」
「はい」
その言葉はロドルフォを喜ばせた。
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