第一幕その六
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蝋燭を受け取る。ロドルフォはその間に別の蝋燭を取り出してそれに灯かりを点ける。そしてそれをテーブルの上に置いた。それからまた書こうとする。そこでふと少女の顔をもう一度見た。
(可愛いな)
最初見た時から実は思っていたがあらためて認識させられた。
(背も低いし楚々としていて。僕好みだな)
「あの」
ここでまた少女が声をかけてきた。
「あ、はい」
「どうも有り難うございます」
「いえ、いいですよ」
ロドルフォは平静を装って言葉を返す。
「蝋燭位」
「それではこれで」
「はい」
二人は別れた。少女はそのまま部屋を立ち去ろうとする。だがここでふと声をあげた。
「あっ」
「どうされました?」
「いえ、鍵が」
彼女は困った声をあげた。
「鍵が?」
「はい、部屋の鍵が。何処かしら」
今もらった蝋燭の灯かりを頼りに床の上を探す。
「あれがないと」
「あっ、お嬢さん」
ロドルフォは立ち上がって彼女に声をかけた。
「扉は閉めて。さもないと」
だがその言葉は遅かった。風が吹いて来たのだ。
「ああっ」
「遅かったか」
その風が少女が持っている灯かりを消してしまった。暗がりはさらに深くなっておりもう真っ暗であった。
「風が吹いて。火が消えてしまうので」
「そうだったのですか」
「申し遅れました。すいません」
「いえ、それはいいですけれど」
それでも少女の声はこまったものであった。
「灯かりをまた。頂きたいのですが」
「今度は火だけでいいですよね」
「はい」
声が頷いていた。ロドルフォはそれを受けてテーブルの上の蝋燭を持って少女のところへ向かおうとする。だがここでまた風が吹いた。そして火を消してしまったのだ。
「参ったなあ」
ロドルフォは火が消えた蝋燭を見て困った声で呟いた。
「どうしましょうか」
「仕方ありませんね」
とりあえずは扉を閉めた。それから言った。
「一緒に探しましょう」
「すいません」
少女はそれを受けて申し訳なさそうに言う。
「いえいえ、困った時はお互い様ですから」
「そうなのですか」
「ですからお構いなく。では探しましょう」
「はい」
こうして二人は暗がりの中うずくまり床の上を手探りで探しはじめた。やがてロドルフォの手に何かが当たった。
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