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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
SAO
〜絶望と悲哀の小夜曲〜
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。黙ってその子を引き渡していただけたら、とても助かるのですが」
ゾッ、とした。レンは
鋼糸
(
ワイヤー
)
と言う
切札
(
ジョーカー
)
を持っていながら、それでも目の前の敵に明確な悪寒を覚えた。
だが、それをおくびにも出さずにあくまで平静さを保った声でレンは言う。
「……んー、もし嫌だって言ったら?」
なぜなら、退く理由など、どこにもなかったから。
そして、それに対する答えは、簡潔かつあっさりしてものだった。
「こうします」
ドン!!という衝撃が自身のように足元を震わせた。
まるで、爆弾でも爆発したかのような音だった。青い闇に覆われたレンの視界が、薄い土埃に覆われる。
やがて、晴れてきた土埃の向こうにレンが見たのは───
ばっくりと裂けた地面の姿だった。
「な……ッ!」
固まるレンを変わらず涼やかに見つめながら、カグラは立ち続けていた。
その手には──何もない。明らかに、腰のところにぶら下がっている長い日本刀で付けられた傷なのに、その細い手には何もない。刀剣類が鞘に収まる際に発されるしゃりん、という独特の音も、何もない。
レンとカグラの間には十メートルもの距離があった。加えて、カグラの持つ刀は一メートル半以上二メートル未満ほどの長さがあり、女の細腕では振り回す事はおろか鞘から引き抜くことさえも不可能に思えた───はずだった。
だが、レンの目の前の地面は豆腐のように切断されている。それは明らかに刀傷。
「やめてください」
十メートル先で、全くキーの変わらない涼やかな声。
「私から注意を逸らせば、辿る道は絶命のみです」
そう言うカグラの腰にぶら下がっている日本刀はきちんと鞘に納められている。少なくとも、先ほどからと同様、抜けられた気配はない。
レンは動けなかった。
自分が今ここに立っているのは、カグラがわざと外したから──かろうじてそう思うのが精一杯で、それさえ現実味が湧いてこない。あまりにも敵が非常識すぎて理解が追いつかない。
ついでに斬られたのだろうか、背後でドズン、と音を立ててでかい木の枝の落下音が聞こえた。本当にすぐ側に自らの身長よりはるかに大きい枝が落下したと言うのに、それでもレンは動けない。
動けない。
あまりの切れ味に、思わず奥歯を噛み締める。
そして、レンが真に驚愕したのはそこではない。その──速さ。一般プレイヤーより数ランク速い分、レンは速さにはある程度慣れている。超高速で打ち合う剣の軌道くらいは余裕で見切れる自信があるほどだ。
だが、その眼をもってしてもカグラの斬撃は速すぎた。恐らく大本は単純な刀スキルの派生スキル、《居合》だと思うが、抜刀はともかく納刀までも見えないというのは非常識すぎる。
カ
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