暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
SAO
〜絶望と悲哀の小夜曲〜
Four days
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を軽く見回す。少なくとも周囲百メートルほどには、モンスターはおろかプレイヤーのカーソルさえも無かった。

安心して、再度レンは歩き出す。

そんな時だった。

「少し待ってくださいませんか?少年」

ゾン、と。いきなり顔のど真ん中に日本刀でも突き刺されたような、女の声。

そして、レンの背中に冷水が流し込まれたような悪寒が走った。

気付けなかった。

その女は木の幹に隠れていた訳でも、背後から忍び寄ってきた訳でもない。レンの行く手、十メートルぐらい先の木々の間に立っていた。

暗がりで見えなかったとか、気が付かなかったとか、そんな次元ではない。確かに一瞬前まで誰もいなかった。それは、先ほどの索敵で確認している。

だが、たった一度瞬きした瞬間、そこに女は立っていたのだ。

「何を心配しているのですか?少年。……あぁ、モンスターはポップしないのでご安心を」

理屈よりも体が──無意識に両腕に全身の血が集まっていく。女が醸し出す、ギリギリと全身をロープで絞られるようなオーラに、レンは直感的にコイツはヤバイと感じ取った。

その女は一目で判るかなり特徴的な服装をしていた。後ろできっちりと縛られた濡れたように光る黒髪。きっちり着こなされた純白の白衣に、目も覚めるような真っ赤な緋袴(ひばかま)。きっちり履かれた草履(ぞうり)

まあ、俗に言う《巫女服》だった。ちなみに正式名称は、巫女装束らしい。一瞬コスプレか?とか思ったが、背中腰辺りにぶら下げているモノを見てすぐさまその思考を打ち消す。

それは、長さ一メートル半ほどの長さを誇る日本刀だった。相当なランクなようで、それは周囲に凍える殺意を振りまいていた。

刀身は鞘に収まっていて見えないが、まるで古い日本家屋の柱みたいな歴史を刻んだ漆黒の鞘が、すでに《本物》を裏付けていた。

「お初にお目にかかります、少年」

そのくせ本人は緊張した様子を微塵にも見せない。

まるで世間話のような気楽さが、かえって怖い。だからレンも負けじとばかりに、発する声に平静さをプラスする。

「………こちらこそ初めましてだね、おねーさん。えーと……」

「失礼、名乗り遅れました。私の名前はカグラ、と申します。我が主の命により、その子を《回収》しに来ました」

「かい……しゅう?」

こんな状況であっても、レンは思わず首を傾げた。意味が解からない。

いや、解かろうとしたくない、のか。唯一解かるのは、その子と言うのがレンではなく、背中ですやすや眠るマイのことを言っていることだ。

だが、レンのそのふざけた態度を見ても、女──カグラは切れ長の眼をコンマ数ミリ細めただけだった。

「ええ、回収です。できれば私は少年、あなたを傷付けたくはありません
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