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第四話 聖竜の女剣士
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はどちらさん? カズラになんか用あんの?」

しかし、見れば見るほど怪しいヤツだ。犯罪者プレイヤーだと言われても納得できる。

「いや、別に……」

そう言い残すと、その男はゆったりとした歩調で歩き去っていく。
男が完全にいなくなったのを索敵スキルで確認して、カズラに向き直る。

「カズラ、今の誰さ? もしかして君の彼氏?」
「さあ? 声をかけられてすぐにあなたが来ましたし、会話すらしてませんね」
「うーん、タイミングがよかったっつーか……その逆か」

カズラが無事だったのはいいが、あの男の目的も気になる。微妙にタイミングは悪かったと言うべきだ。

「まあいっか。アイツのことはまた今度で」

今はこちらのほうが優先である。男のことなんて考えても詰まらないだけだ。

「それで、こんなとこでなにやってんの? 男引っかけに来たわけじゃないっしょ?」
「引っかける?」

きょとんとした表情で首を傾げるカズラ。

「いわゆる逆ナンだよ、逆ナン。性転換可能のMMOには結構多いんだよね。まあSAOで逆ナンっていうと、現実でのとほとんど変わんないけど」

なにせ、SAOでは全プレイヤーの容姿は現実のもののほとんど同じだ。ゲーム開始から一年半以上過ぎているので、俺たちの年代は容姿が多少変わっているだろうが、一目で分からないというほどでもない。
つまりこちらで知り合った相手が比較的近く住んでいたに場合、いつかSAOがクリアされてもこちらでの関係はあっちに戻っても続くことになるのだ。
そう考えると、普通のMMOのごとく安易な気持ちで付き合おうとは思えない。第一、MMOの利点というのは互いの顔が分からないというものなのだから。

「ジルが言っていることは理解できませんが、逆ナンというのはそこまで間違ってもいませんね」
「……ガチで?」

あのカズラが逆ナン――ダメだ、そのシーンがまったく想像できない。

「でもお誘いとは言っても――」

すると、カズラが唐突にウインドウを操作し始める。

「こちらのほうですが」

俺の目の前に『Kazura』から一対一のデュエルを申し込まれました』、とシステムメッセージが表示される。

「……えー、なにこの超展開」

俺は間抜け面で呻き声を上げることしかできなかった。
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