アインクラッド 前編
Determination of black
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ターごときと一緒にしないでくれ」
言い放ったキリトに対し、マサキは賛嘆の念を視線に乗せて送った。――自らがβテスターへの敵意を全て背負うことにより、他のテスターへの非難を防ぐ。もし仮に、新たな《ビーター》が複数人現れたとしても、新規プレイヤーとの間には圧倒的な知識やプレイヤースキル、そして恐らくレベルにも大きな開きがある以上、むやみにPKされる危険性は少ないと見積もっていい。その上、憎しみとは、時に大きな原動力となる。うまい具合に作用すれば、新規プレイヤーのレベルやプレイヤースキルの向上を速め、ひいてはこのゲームの攻略にも大きくプラスの貢献をすることになるだろう。
尤も、それはプレイヤーたちからの敵意を一身に背負うことの精神的負担を考えなければの話だが。
感心するマサキと開いた口が塞がらないプレイヤーたちをよそに、キリトはウインドウをタップした。次の瞬間、今まで彼の体を包んでいたダークグレーの革コートが光になって消え、まるで自らの存在を高らかに宣言するような、それでいて深い闇にひっそりと佇む光景をイメージさせるような、黒い膝下までのロングコートが現れた。
コートの裾を翻し、キリトはマサキとアスナの間を横切ろうとして、一瞬だけ立ち止まった。そのまま顔を動かさずにささやく。
「……マサキ。その、ありがとう。許してくれて」
「…………」
マサキは一瞬、「え?」と疑問の声を出してしまいそうになるが、何とか持ちこたえた。沈黙に続いて答えようとするが、それはキリトに遮られる。
「俺、今までずっと自分のこと責めてた。……もちろん今でも反省はしてるけど、昨日マサキが許してくれて、本当に救われたって言うか、俺でも皆のために何か出来るって思ったんだ。もし昨日のことがなかったら、今みたいな判断は出来なかったと思う。……本当にありがとう。また、何か訊きたいことがあったら、何でも言ってくれ」
「……言われなくてもそのつもりさ。知ってる情報、洗いざらい吐かせてやるから、覚悟しとけよ」
「そいつは恐ろしいな」
予想外が続くキリトの言葉に、飛び出しそうになる「ただお前を利用しただけだ」の一文をぐっと呑み込み、代わりに彼が一番望んでいるであろう言葉を並べる。彼からの信頼をさらに強め、情報を引き出しやすくするために。
マサキだけにしか見えないほど微妙に口角を吊り上げたキリトは再び歩き出し、王不在の玉座の後ろに設置された扉の向こうに姿を消した。同時に、パーティー解散を示すウインドウが体の前に現れる。
彼が最後に「初見のMobに殺される覚悟がある奴だけついてこい」と言っていたため、追いかけるものは誰もいな――くはなかった。ただ一人、先ほどその華麗な容姿をフーデッドケープから解き放ったアスナが、エギルとキバオウの二人と二言三言言葉を交わ
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