アインクラッド 前編
Determination of black
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られない。
それに、そもそもそんなことを考えずとも、彼女が故意で間違った情報を配布したわけではないことは、《アルゴの攻略本 第一層ボス攻略編》を読めば一目瞭然だ。ラストに書かれた赤いフォントの一文に、その情報があくまでβテスト時の物である旨が、はっきりと記されているのだから。
しかし、マサキがその考えを口にすることはなかった。代わりに、我慢の限界が来たらしく、文句をつけようとしたアスナとエギルの肩を掴み、首を横に振る。
「何でなの?」
アスナの瞳が烈火の如き怒りに燃えるが、マサキは表情一つ変えずに言う。
「あの状態になった人間に、何を言っても無駄さ。更なる屁理屈を塗り重ねるだけだ。それどころか、お前たちにまで火の粉が降りかかる結果になる可能性もある。……それでも行きたいと言うのなら止めはしないが、やめておいたほうがいい」
「……それでも」
マサキの制止を振り切ってアスナが前に出ようとする。しかし、キリトは彼女を手で制すると、口元を獰猛に歪め、狂ったように笑い出した。
「ククク……ハハハハハハ!! 俺が元βテスターだって? あんな素人連中と一緒にしないでもらいたいな!!」
「な……なんだと……?」
シミター使いは困惑の視線をキリトに向ける。キリトは同様に唖然としているプレイヤー全員を見渡し、さらにふてぶてしい表情を形作って続ける。マサキは切れ長の目を細め、瞬きもせずにキリトを見つめた。
「いいか、よく思い出せよ。SAOのCBTは、とんでもない倍率の抽選だったんだぞ。受かった千人のうち、本物のMMOゲーマーが一体何人いたと思う。ほとんどはレベリングのやり方も知らない初心者だったよ。今のあんたらのほうがまだしもマシだ」
突如起こったキリトの演説に、四十三人の観衆はただ息を飲み、彼の言葉の行く末を探ろうとする。キリトは、浮かべている笑みの温度をさらに下げた。
「――でも、俺は違う。俺はβテスト中、最も高い層まで登った。ボスのスキルを見切れたのは、上の層でカタナを使うMobと散々戦ったからだ。……他にもいろいろ知ってるぜ、アルゴなんか問題にならないくらいにな」
キリトが言い切ると、再びその場を沈黙が支配した。皆、呆気に取られて言葉が出ないのだ。
だが、どれくらい経ったときだろうか。真っ先にキリトを糾弾したE隊のプレイヤーが、またもや掠れ声でキリトをチーターと罵った。そして、それにつられ、周囲の者たちからも、チーターやチートという単語が放たれた。やがてそれはβと混ざり、《ビーター》なる奇異な単語が何処からともなく生成される。
「《ビーター》。いい呼び名だな、それ。……そうだ、俺は《ビーター》だ。これからは元テス
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