暁 〜小説投稿サイト〜
英雄伝説 零の軌跡 壁に挑む者たち
6話
[1/4]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
クロスベル自治州の成り立ちはエレボニア帝国とカルバート共和国の領土争いに起因している。
古来からここは南北に険しい山岳地帯が続き、平地を東西に抜ける形で交通の要所となっており自然と商業土地として発展し、その険しい山岳地帯から七曜石が取れる。
故に周辺国からその商業力と資源を狙われて争奪される時代が続いていた。
それは現在でも変わらない。
帝国、共和国の間で戦争が起これば大兵力を送り込めるこの土地が両国の侵攻の橋頭堡として戦略的に絶対優位地点であることは変わらない。
飛行船の登場で陸路のみに限定された侵攻路としての価値は下がったものの、輸送能力を含めてここを取ることの価値は些かも揺らいではいない。
そのためクロスベルの平和は両国が平和であることが言え、この両国が対峙する冷戦状態の現状を解消する運動、あるいは地理的、そして蓄えられた経済力でバランスを取っていくことがクロスベルが大陸の平和に寄与する行為である。

クロスベルの安全保障という本を読んでいたエリィはうんざりしたように本を閉じた。
久しぶりに故郷に戻って一番新しい政治参考書が売られていたので読んで見たが僅かに現状に対して加筆があるのみでなんら新しい情報はなかった。

18歳になったエリィは年相応以上に女性らしい柔らかさと落ち着き、また令嬢らしい優雅な立ち振る舞いを身に着けて表情には知性と強い意志が宿り、誰もが一目で只者ではないと思うぐらい美少女だった。
しかしそれは彼女がマクダエル家の令嬢として、また将来政治家になるには綺麗な方が良いという自己鍛錬の結果だった。
そんな彼女は数ヶ月ぶりに帰った自宅で沈んでいた。
彼女はこの数年各国に留学していたからだ。その結果、何も掴めなかった徒労感に沈んでいたのである。


10年前、両親が離婚してからエリィは自らも政治家を志して家業を継ぐと祖父を説得して秘書を家庭教師につけてもらい専門的な政治学を学んでいたのだが、学んでクロスベルの現状はエリィの想像を遥かに越えていた。
学べば学ぶほど現状に対する閉塞感を知ってしまい、完全に手詰まりになってしまったのだ。
祖父を助けようにもまだ子供のエリィ程度の人物はいくらでもおり、何かがしたいけど、何をどうしたら良いかわからない。必要とされない無力感に打ちのめされて空回りしていた頃、家庭教師をやってくれている祖父の秘書のアーネスト先生が言ってくれた。

「エリィは若いじゃないか、もっともっといろんなことを学ぶべきだよ。私はもう政治一筋だけど、君はいろんなことが学べる。いろんなことに挑戦すべきだよ」

子供ではなく若いと言ってくれたことが私を傷付けないための些細な配慮だったがこの言葉に焦っていた私は救われ政治の勉強ばかりしていたことから一歩離れることにした。

まず最初に手を出したの
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ