第23話 温泉街で休日?
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目を集め再びなのは達に向かって言う。
「と、とにかく! お子様は遠出してうろちょろすんじゃなくて、お家でお勉強でもしてりゃあいいのさ。特に、最近新しいおもちゃをもらってはしゃいでるようなお子様はねぇ。
―――あんまりお痛が過ぎると、ガブリといくよ?」
鋭い犬歯を見せるほどの豪快な、あるいは危険な笑みと警告じみた言葉。
女性の不敵な態度に、霧散しかけていた緊張感が再び場を支配した。
「お腹、すいてるの?」
かと思いきや次の瞬間、あからさまな皮肉と警告の言葉をどう解釈したのか、純吾が心配そうに女性の顔を覗き込んだ。
純吾の返しに女性の危険な笑みがそのまま引きつった笑みに変わり、後ろのなのは達は口を押さえ顔を逸らしている。どうやら、吹き出すのを必死に我慢しているようだ。
「え、えぇとね、坊や。さっきのガブリってそんな意味じゃなくてね」
「これ、ジュンゴが作った。食べて」
言葉の意味を教えようとしているのに、ごそごそと浴衣の右手の袖をまさぐる純吾。
「人の話が聞けないのかぃあんたはっ!」
その行動に女性が噛みつかんばかりに顔を近づけようとする。
「……って、何なんだい、これ」
が、ずいっと目の前に出されたモノに出鼻をくじかれ、微妙な顔をして純吾に質問した。
「ん…。温泉卵、おいしいよ?」
「い、いや。卵だけ渡されてもねぇ」
どう判断したらいいのか、女性がまた困惑した様子で片頬をひきつらせるように笑う。それに「じゃあ」と言って今度は左側の袖をまさぐる純吾。
袖から出てきたのは、笹に包まれた細長い物体。
「えぇっと、今度は何なんだい?」
「卵と食べたらおいしいから、どうぞ」
そう言って笹の包みを解く。
鰹節と揚げ物の匂いが混ざった何とも言えない香ばしい匂いが漂い始めると同時に、出汁の染みたエビの天ぷらの入ったおにぎりが4個ほど並んでいるのが女性の目に映る。
中から出てきたのは、名古屋名物てんむすである。
「ほ、本当に良いのかい? すっごい美味そうじゃないかぁ」
さっきまでの困惑はどこにいったのか。躊躇うように聞いてくるが、目は純吾の手元に釘付けでよだれを垂らしっぱなし。彼女に尻尾でもあったら全力で振られていた事だろう。
「お腹がすくの、ダメ。だから、どうぞ」
もう一度ずっ、とてんむすを女性へ押しだす。
女性はそれで受け取っていいと判断したのか、「待て」と言われていた犬が我慢を終えたかのように目にも止まらぬ速さで温泉卵とてんむすを自分の胸にかき抱き、満面の笑みを浮かべて言う。
「いやぁ〜、坊やったらほんっと良い男だねぇ! 今まで碌なもん食べてなかったから、うちの子も喜んでくれるよぉ。
あっ
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