第23話 温泉街で休日?
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ったりとした空間で、士郎と恭也は岩で組まれた湯船に背を預け、盆に載せた熱燗を酌み交わしつつ談笑をしていた。
最近の恭也や士郎の天敵たるリリーは衝立の向こう、お酒を飲んでも帰るのは明日だから一向に問題なし。
2人とっては、本当に久しぶりに訪れた平穏な一時だった。
一献、杯に入れた酒を呑む。
口に含むと同時に、熱されて強くなった日本酒独特の甘く芳醇な香りが口内に広がる。
喉を通り過ぎるそれを楽しみながら辺りを見渡すと、女湯との衝立近くで、純吾とユーノ、それにパスカルを見つけた。
衝立の近くでこちらに背を向け、前かがみになり何かをしてるようだった。
恭也の目には、彼らが何かしらまずい事――ぶっちゃけ、覗きをしようとたむろしているように見えた。
何を不埒な事をしようとしてるんだっ!
恭也は自分の弟子の愚行に呆れつつも、そんなはしたない事をやめさせようと純吾の肩に手をかけ、彼の方へ振り向かせる。
「おい、純吾」
もっ、もっ、もっ、ごっくん。
「なに、師匠?」
振り返った純吾の顔は何かがいっぱいに詰め込れ、ハムスターのような間の抜けたものだった。
「い、いや…。壁際で何をしているんだと思ってな」
予想と余りにも違った純吾の様子に面食らい、ついどこか呆気にとられたかのような声で尋ねる。
「ん…。これ、温泉卵」
そう言って壁際にあった湯源の下から取り出したのは、何個もの卵が入ったミカンを入れるネット。
良く見たら、ユーノも一心不乱に温泉卵を食べてるし、パスカルも地面に置かれたそれをあぐあぐと食べている。
「純吾から、温泉には変わった卵があるって聞いてたんですけど。こんな白身も黄身もとろっとろな卵なんて僕、初めて食べました」
恭也が近づいた事に気がついたか、黄身のべっとり付いた顔をあげて喜色満面でユーノが言い、「ワンッ」と同じように顔を汚したパスカルも一吠えする。
純吾もそれを見て嬉しそうに、どこから持ってきたのか出汁を入れた小皿に温泉卵を落とし、彼らの前に差し出していった。
「はっはっは!
純吾君達にとっては、色気より食い気ってことさ、恭也。
それより純吾君、俺の方にも一つ分けてくれないかい? 温泉卵と熱燗、なかなか乙なもんだよ」
豪快に恭也の検討違いを士郎が笑い、ついでに温泉卵を要求。
こんな所でも料理を求められれば嬉しいのは料理人見習いの性か、純吾は嬉しそうに一つ頷くと、先程と同じように小皿に入れた温泉卵を士郎のもとに持って行った。
「……はぁ、まぁ不穏な事をしていなかったようで良かったよ」
その後露天風呂から上がるまでは何もなかったが、上がった後「勝手に温泉卵を作らないでください!」と係りの人からこっ
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