第23話 温泉街で休日?
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そんな2人に両側からぎゅうぎゅうと挟まれて、純吾は肩身狭そうに呟く。
彼の腕に抱かれているパスカルも、普段はピンと立った耳はたれ、純吾と同じように身を縮こませ弱々しく鳴いている。
久しぶりにもう一人の主人に会えたという最初の嬉しさも、どこかに吹き飛んだようだ。
「ねぇ。リリー、シャムス」
「なぁにジュンゴ♪」「にゃにかにゃ、ジュンゴにゃん♪」
もの凄い速さと笑顔で返答が返ってくる。
「仲良く……できない?」
「「えぇ〜」」
何度目になるか分からない純吾の問いかけ。それに両者は笑顔を引っ込め、もの凄い渋面で互いの顔を見つめあうが
「駄猫ちゃんがジュンゴを諦めるってんなら、良いわよ♪」
「リリーがジュンゴにゃんを諦めるんなら、良いにゃ♪」
「「あ゛ぁん?」」
すぐ様、見つめ合いがメンチの切り合いになった。
そんな2人の様子を、両側から物理的に圧迫され更に狭くなった車内で見つめ、純吾とパスカルは更に大きなため息を吐くのだった。
「……いや、シャムスが大きくなったままっていうのはどう考えたってまずいだろう」
「ふふふ。ねぇ恭也、慣れって怖いわよねぇ。家ではあれがデフォルトよ?」
そんな彼らの前方、運転席と助手席には、どこか疲れたように窓の外を眺める恭也と、何日もこの不毛な争いを見続け、悟りの境地に達して穏やかな顔をした忍がいたとかいなかったとか。
「純吾君、やつれた?」
「えぇ、明らかにゲッソリしてるわね。……一緒にいるパスカルも」
温泉街について全員が車から降りて、真っ先に目に入ったのはげんなりした純吾とパスカルだった。
今もすずかとアリサが小声で話し合っている目の前で、リリーが先程のお返しとばかりに、シャムスの前でこれ見よがしに純吾に抱きつき、ドヤ顔を決める。元の猫に戻らざるを得なくなったシャムスは、全身の毛を逆立て精一杯の威嚇をしていた。
「おねーさま、向こうの車に乗らないで正解でしたね!」
「大きな声で言うものではありません、ファリン。忍お嬢様と恭也様の身にもなってみなさい」
屋敷でいつも見ている喧嘩から少しでも離れる事ができて元気いっぱいのファリンと、それをたしなめるノエル。
彼女たちの視線の先には自らが仕える主である忍と恭也。
2人は宿の前にある小さな池の鯉を一見中睦まじそうに眺めているが、目元を良く見たらどこか遠い眼をしている。
あの車内という地獄を耐え抜き、人間的に一つ大きくなった証である。
「ねぇユーノ君。あれって、男の子にとって羨ましいものなの?」
「うぇっ!? い、いや。どうなんだろうねぇ〜、あっははは」
目の前の光景を見て返答に困る質問をするなのはに、どう答
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