終幕
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「わかりました」
「一つだけ言っておくよ」
「!?」
私は詩人の言葉に目を向けさせた。
「人はね、二つのものによって生きているんだ」
「二つのもの」
「そう、一つは芸術」
これは四人に共通するものだった。
「そしてもう一つは」
「もう一つは誰でも持っているものさ」
彼は笑ってそう述べた。
「それは」
「それは?」
「愛さ」
彼は微笑んでこう言った。
「愛、ですか」
「そう、愛は人の心を幸せにするんだ」
彼は笑っていた。
「どんなに辛く悲しい結果になろうとも。愛は人にとってなくてはならないものなんだ」
「なくては、ですか」
「そうさ。それについては店でゆっくりと話そう」
「はい」
「じゃあ。行くか」
私は彼等について部屋を後にした。部屋を出る時最後に後ろを振り向いた。そしてあの薔薇色のボンネットを見た。
ボンネットは何も語らない。だがその薔薇色は私には見えた。愛の色に。どんなことがあっても誰かと誰かが愛し合い、幸福な一時を過ごしたという事実は変わらないのだ。永遠に。
ラ=ボエーム 完
2006・5・9
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