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我が剣は愛する者の為に
エイプリルフールネタ
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ず頷いた。
この刀は中国のある地層から発見され、地層年齢は八〇〇年前のものだった。

「これ自体が一種の概念武装なのかしら?
 でも、爺様が言った通り、これを扱う英霊は確かな英霊よ」

だからこそ、疑問に思った。
これだけ年月が経っていながら、風化していない時点で下手をすれば魔法の領域に入る武装だ。
それなのにこれを扱ったという英霊はどれだけ調べても、出てこなかった。

「だが、何が出てくるかは分からない。
 分かっている事は剣の英霊、それだけだ」

鞘に収まった刀を長櫃に戻し、そのまま淡々と不満の籠った口調で語る。

「始めからどの英霊が来るか分かっていたら、作戦を考えられるのだがこれでは考えられない。
 概念武装としては一級品でも、それを扱う英霊が脆弱では意味がない。
 あのご老人はそれが分かっていない。
 聖遺物の良さだけしか目に見えていない」

的確すぎる発言に苦笑いを浮かべる。
実際に的を射ているのだから、フォローのしようがなかった。

「でも『セイバー』は聖杯が招く七つの座のうちでも最強とされている。
 だから、あなたが考えている最悪のシナリオにはならないはずよ」

「僕自身、そこも危惧している。
 セイバーということは正々堂々と真っ直ぐな性格が多い。
 いや、英霊となった英雄は基本的にそうだ。
 そんな彼らと僕と上手くやれると思うかい?」

これにもアイリスフィールは上手く言葉に出来なかった。
切嗣が異端と呼ばれるには明確な理由がある。
戦闘に赴く場合は幾重にも張り巡らせた策・謀略と罠で「絶対に勝てる状況」を作ってから。
戦いにおいても確実に相手を葬ることを第一とし、そのためなら狙撃、毒殺、公衆の面前での爆殺、人質作戦、だまし討ちなど徹底して手段を問わない。
目標を達することでより多くの命が救えると判断したならば無関係の人間を利用し、巻き添えにすることすら躊躇わない。
正々堂々と戦う英霊とは明らかに正反対。
そんな二人が相容れる訳がない。
だけど。

「だけど、僕は負けるつもりはない。
 どんな英霊が来ようとも、僕達の悲願を必ず成就させる」

確固たる意志を込めて切嗣は誓う。
他の誰でもない自分と愛する妻、そして愛する娘に。
そんな彼にアイリスフィールは優しく彼の肩を抱く。

「私の預かる聖杯の器は、決して誰にも渡さない。
 聖杯の満たされる時、それを手にするのは――切嗣、あなただけよ」

聖母のような優しい口調で彼女は言う。
彼の妻たる女は、いま自らの家門の悲願より、夫たる男と志を同じくしている。
その事実は深く切嗣の心に響いた。



召喚の準備を終え、二人は礼拝堂にいた。
切嗣は床に描き終えた魔方陣の出来を確認していた。


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