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剣の丘に花は咲く 
第六章 贖罪の炎赤石
第七話 贖罪
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「邪魔だっ! 退けッ!!」
「退かないよ……っていうかあんた一体何しようとしてんのさ? まさか、馬鹿なこと考えてんじゃないよね?」

 が、その前にロングビルが立ちはだかり、杖をアニエスに突きつけていた。
 盾になるかのように、立ち塞がるロングビルを忌々しく見つめていたアニエスは、震える手で剣を鞘に戻すと、ロングビルの肩越しにオスマン氏を睨み付ける。

「知っていて……何故あの男を雇った」

 アニエスの声は先程のような怒声ではなく、小さく呟くようなものだったが、声が震えるほどの、そして聞くものを震えさせるほどの怒りと憎しみに満ちていた。

「……未来のため……じゃな」
「は?」

 ぽつりと口にされた言葉の意味が分からず、アニエスの口から息のような声が漏れた。

「どう言う意味だ?」
「……彼と初めて会った時……彼は今にも死にそうじゃったよ……」

 昔を思い出すかのように、オスマン氏は顔を上に上げると瞼を閉じた。

「あの日は、火を教える教師が辞めて、その代わりを探しに王都に向かっている時じゃった。道中オークの集団に襲われての、それから助けてくれたのがコルベールくんじゃった。火を利用した見事な魔法でオークの集団を一気で殲滅した彼に、是非学院の教師となってくれと頼み込んだのじゃが」

 目を開けたオスマン氏は、肩を竦めて見せる。

「見事に断れたのじゃ。『自分は人を殺す方法しか知らない。こんなわたしが人にものを教えられる理由がない』とな。そう言った彼の目を見た時、わしはとても驚いたよ。こんな目をして生きていられる人間がいるのかと。まるで切れこみが入った糸のような人じゃったよコルベール先生は。ちょっとした振動で切れてしまうような、そんな……ギリギリのバランスの上で生きている……そう思ったものよ」

 そこで、オスマン氏の表情が変わった。
 悲しげな表情から、

「じゃからわしは決めたのじゃ……彼を無理やりにでも教師にしようとの」

 不敵な、ふてぶてしい笑みに。

「どういう事だ?」

 オスマン氏の声の独壇場だった食堂に、アニエスの声が加わった。

「わしはの、長生きじゃ」
「知っている」

 アニエスの声に、皆が頷いてみせる。

「長く生きているということは、それだけ色々な人間を見てきたということじゃ。だから彼のような目を見たのは初めてじゃない。ああいう目をするのは、後悔に押しつぶされる前の人間がする目じゃ。自分がやったことの罪悪感や後悔に押しつぶされ、自分で自分を殺す前に浮かべる人間がする目じゃった。……じゃからこそ不思議じゃった」
「……何がだ」

 チラリと未だ煙がくすぶる中庭に目を向けると、オスマン氏は話を続ける。

「彼がまだ生きていることにじゃ。あ
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