第六章 贖罪の炎赤石
第七話 贖罪
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「五分たったな」
ポツリと小さく呟いた声にも関わらず、メンヌヴィルの言葉は広い食堂にいる全員の耳に入った。
椅子からゆっくりとした動作で立ち上がったメンヌヴィルは、手に持った杖を座り込む女生徒たちに向ける。
「さて、誰を殺そうか」
何の気負いもなく、淡々とメンヌヴィルが上げた声に、女生徒たちから声にならない悲鳴が上がる。
「わしにしてくれんかね」
「あんたは最後だ」
声を上げるオスマン氏に顔も向けず答えたメンヌヴィルが、近くの奴でいいかと目の前にいる女生徒に杖の先を向けようとした瞬間――。
食堂に小さな紙風船が姿を現した。
突如現れた、ふわふわと浮かぶ紙風船に思わず食堂にいる者たちのほとんどの視線が向けられ――。
紙風船が爆発した。
激しい音と光を放ち爆発した紙風船に、捕虜となった学院の者だけでなく、傭兵たちもパニックに落ち入る。
それを好機と、紙風船を飛ばした張本人であるキュルケとタバサ、そしてマスケット銃を構えた銃士が食堂に飛び込んできた。このまま傭兵たちを抑えこめる――筈だった。
メンヌヴィルがいなければだが。
女生徒に向けていた杖の先をキュルケたちに移動させたメンヌヴィルが、何発もの炎の弾を放つ。
その炎の弾がキュルケたちの身体に食らいつく――。
「ははっ! 甘いよ!!」
「むっ!?」
ことはなく、盾になるように床から現れた岩の壁が、炎の弾を防いだのだ。
「あんたの相手はあたしだっ!!」
「ちっ!」
キュルケたちの後ろから飛び出したロングビルは杖を振るい、十体の二メイルを超える巨体を持つゴーレムをメンヌヴィルを向かわせる。
「ちっ、ゴーレムか!?」
「正っ解ッ!!」
メンヌヴィルは迫るゴーレムの内何体かは炎の弾で破壊することは出来たが、全ては破壊できなかった。残ったゴーレムに掴まれたメンヌヴィルは、ゴーレムと共に中庭に投げ出される。
ゴーレムと一緒に中庭に転がったメンヌヴィルは、素早く立ち上がると、追いかけて中庭に飛び込んできたロングビルに向け炎の弾を飛ばす。
「その程度!!」
向かってくる炎の弾を、ロングビルはゴーレムで受け止める。炎の弾を食らったゴーレムの身体が、どろどろに溶けていく。
「『白炎』のメンヌヴィル……噂通りってわけか」
その光景を横目に小さく呟く。
ロングビルが作り上げたゴーレムは鉄で出来たゴーレムだった。石では脆すぎ、銅では融点が低いため、火のメイジ相手では、鉄のゴーレムを使うのがロングビルの定石だったが、今回は相手が悪すぎた。時間がなく、急拵えで作ったため、鉄の純度はそう高くはないが、それでも鉄製のゴーレムである。それをいともたやすく溶かしてしまう炎。鉄を溶かしてしまうほど
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